10/29の日記

00:17
髪 〜仔カカシの初恋〜
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その人を、初めて見た時

綺麗な髪だな… と思った



火影の補佐役の1人だったその人は 
見た目とは似つかわない豪快な人で


“黙ってりゃ〜美人なのに…” を地でいく人だったが


俺は、そんなサバサバしたところも 酷く気にいっていた




「カカシくん、そのアンダー 袖口破れてるってばね
 貸して!縫ってあげるから 」

俺は、破れた袖口を抑えながら、じっとクシナさんを見た


「なんだってばね!その怪訝そうな眼差しはっ!」

腰に手を宛てて、鼻息の荒い女の人って… 
初めて見た

苦笑いの後

「ヤですよっ、クシナさん ヘタなんですもん…」

途端、顔色を変えて怒りだすクシナさん
“ウガッ“とか“フガッ“とか言う女の人も… 
初めて見た



騒ぎを聞きつけた四代目が、
「どうしたの?」と現れ

「カカシくんは、可愛くナイ!!子供なのに!!チビなのに!!たわし頭なのに!!」
と訳の分らない訴えをしていて


困った四代目は、クシナさんに 
「クシナ、コレ食べてちょっと待っててね」なんて、お茶受けのお団子を差し出した

怒りながらも、むしゃむしゃと食べてる間に


「どうしたの?カカシ?」と、俺に事情説明を求めてきたので

「クシナさんが、破けた服縫ってくれるって言ったんですけど 断ったんです」と、正直に言うと

「カカシ、人の好意は素直に受け取らないとダメだよ」なんて怒られたので

俺は無言で、火影室傍の 暗部待機室に行き

自分のロッカーから、暗部服を取り出した


「先生、これでも クシナさんにやってもらえって言いますか?」

差し出された暗部の白い胴宛てを見て 青くなる先生に

「そのクマのアップリケ、ちゃんと縫えなくて 終いには、接着剤でくっつけたそうです…」

アハハハハッ なんて力なく笑った先生の 冷めた笑いでクシナさんがまた

「どこが悪いってばね!子供には、クマさんのアップリケでしょうが!」

と、再度腰に手を宛て 鼻息を荒くした

先生は、小声で 「後で新しいの支給してもらうように言っとくから…」とこの場を収めた



こんな事は、日常茶飯事で 
子供扱いするクシナさんとスレた俺 それを宥める四代目 そんな図式がスッカリ出来あがっていた



そんな反面、なぜか里の皆は クシナさんにヨソヨソしくて

一生懸命 皆と仲良くなろうとしているクシナさんとは真逆で
取り巻く環境は、なかなか改善される様子が無かった

なんか理由があるのだろうが、誰に聞いても
「子供は知らなくていい」とか言われるだけで

四代目に思い切って聞いた時も、寂しそうな顔ではぐらかされただけだった



その日も、1人 火影岩を眺めていた姿を見つけ
気配を消して、驚かせようと近寄った

「どうしたんですか?」

突然の声に驚いて 
振り向いたその瞳の雫が、零れた

慌ててそれを拭い 無理に笑った顔に 

胸が痛んだ



なんとなく…俺にも 分る気がする


ヨソヨソしい態度や 遠巻きに見る視線

そんなのに、自分も覚えがあった 



――「あれが、白いキバの息子よ…」



そう… 何年か前までは、今のクシナさんにするみたいに 

皆、俺を見ていたから…



「泣きたければ、泣けば…?」

そう言ったら 子供の前でなんか泣けない 
とかなんとか言いながら鼻を啜って

ちょっとだけ、背中かして なんて

同じくらいの身長の俺の背に屈んで鼻水擦りつけながらワンワン泣きだした



一通り泣いた後、ありがとね とギュッと後ろから抱きしめられて

こう言うのは、逆なんじゃ…と思ったケド

後ろから 風で流れてくる紅い髪を、そっと撫でた


この人を、守りたい… 

急速に膨れ上がり、込み上げてきたこの気持ちが
なんだか分らないケド 俺の中を温かくした


「初めて会った時から 思ってたケド… 髪、キレイだね… 」

そう素直に口にしたら、

「ありがと… 大好きな2人に褒められて 嬉しいってばね…」

「俺…」何かを口走りそうになった時四代目が現れ 俺達を見て

満面の笑みで「…ナニしてるの?」とクシナさんと俺を引き離した

なんで、先生は怒ってるんだろう?

あれは、絶対 凄く怒ってる時の顔だ…

「カカシくん、ごめんね…」なんて、ちょっとバツが悪そうに頭を掻いたクシナさんを連れて 
去って行く先生をぼんやりと見ていた


先生が、クシナさんの髪を 撫でた

凄く優しく撫でる先生の手と 

その髪を、愛おしそうに見つめる先生の横顔を見た時


“大好きな2人“ の単語と 
先生の怒っている訳 が繋がって

ズキリと胸が締めつけられた


まだ…始まっても無かったのにな…

その胸の痛みと共に、溜息を吐いた







end





カカシの初恋が、クシナだったらいいな〜 と言うねつ造SSです

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