11/06の日記

20:48
光 〜ミナト〜 
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「 どうして君は、ここに居るの? 」


そう尋ねられたケド


そんな事… 考えた事も無かった


ポカンとしてる私を、クスクス笑って揺れる金の髪


「あんたこそ、自分の心配したら?」


仏頂面で言い返すと


「…そうだよねぇ…」


なんて溜息をついてうな垂れた


そう、おおよそ その冷静さと似つかわしくない今の状況


なぜなら 彼の手には、重く頑丈な手枷がはめてあり


それは、天井から続く鎖に繋がっている


両の足は、大人が3人がかりでやっと動かせるほどの


重い鉛の付いた足枷もついていて


どう見ても、あんたは捕えられた捕虜だよね?


なんでそんなに、飄々としてるの?


解せない顔をしながらも、この男の世話をする


物心ついた時からここで暮らしている私には

生きる為に ここで奴らの言いつけ通りに暮らすしか

生きる術がナイ


それが現実…


この男だって、取り引きまでの有効な捕虜


それから先は…  イヤ、多分… 先はナイ…


それも、現実


なのにのん気に毎日 私に話しかけてきて


「名前は?」 「歳はいくつ?」 「故郷はどこ?」


まるで友達に話すように 話しかけてくる


ずっと無視していたら


今度は、自分の事を勝手に話だして


「俺、結構強いんだよ〜 時空間忍術が使えてね 」


とか、1人でべらべらと喋っていて


「強いのなら、捕まらないと思うケド」


嫌味を言ったら、「ちょっと、ドジっちゃってね〜」


あははははっなんて能天気に笑うものだから


呆れてしまった


ある時は、人の事を勝手に「ななちゃん」とか「まなちゃん」とか呼んだりして


イライラする気持ちで


自分の名前を教えたら


次から、煩いくらい名前を呼んできた


名を呼ばれる事など無かった私には、人から呼ばれる自分の名前の響きに


ドキドキしたりして


イケないイケない、コイツのペースに巻き込まれちゃ…


なんて自分を戒めることが毎日…


そんな日々でも、時間は残酷に過ぎていく


時間が経つという事は… 絶望とイコールだ


一度 「あんた… この状況で怖くないの? 」と尋ねたら


「う〜ん…大丈夫でしょっ!俺は、仲間を信じてるしね」


なんて満面の笑みで微笑まれた


忍びのクセに、なんて楽天的な…


そう驚いていた矢先


ホントに、彼を助けにきた同朋に救出され


風のように消えていった



私は、残ったわずかな残党に引き連れられ


また違う里外れの隠れ家に潜んでいた


話す相手の居なくなった私


イヤ、勝手にヤツが話してたのを煩く思ってただけだケド…


時折思い出す


笑った顔と、よく話に出てきた 自里の草花の話や食べ物の話


それらは、思い出す度 私の内側を温かくしたケド


一瞬のみで、暮らしに変わりはなく


また以前のように、虚ろな日々を過ごしていた


ポッカリ空いた何かに 時々胸が痛んだケド 


それがなぜかは、分らなかった



外で、爆薬の音がする 争う声と共に


「もう囲まれた… こうなったらおまえを盾に逃げるしかねぇ」


後ろに腕を捻りあげられながら 恐怖に震える


ガタガタと震える足を構わず、数歩歩かされたところで


急に腕の痛みが消えた


「これが、時空間忍術って言うんだよ 」


振り向いた私の視界には、倒れている男と 


ねっ!とばかりにウインクする見知った顔


周囲の緊迫感とは、似つかわしくない声で


「探すのに苦労したよ〜 待たせちゃってごめんね」


なんてのん気にその頭をかきながら


私に手を差し伸べた



「 迎えにきたよ… 」



彼の後ろから差し込む光が、金の髪に反射して光る


私は、その光に手を伸ばした






end



☆コメント☆
[月子] 09-08 05:33 削除
2人の今後が気になりますね(*´д`*)
ミナトかっこよすぎます←

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