12/13の日記

21:47
消せない想い 〜社会人篇(シカマル)〜 
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今日も、家路にたどり着いたのは もう日付が変わりそうな頃だった


近所のコンビニで、ブラックの缶コーヒーとカロリーメイトと野菜ジュースという、
身体に悪いんだか良いんだか分からない物を買って 帰宅する


大学を出てから、一人暮らしを始めたアパートは
平日のこんな時間からか、ひっそりと静まりかえり
明りが灯る部屋も、数少なく 物悲しくなる


俺は、帰り道ずっと考えないようにしていた
職場での出来事を、又 思い出し溜息を吐いた 


今日、俺の上司だった人は 会社を辞めた


俺のセイで… 


“そうじゃナイ”と笑って言ったケド
上がどういう策を練っていたにしろ
キッカケを与えてしまったのは、俺の浅はかな行動のセイだ


ガキみたいに、気持ちを抑えられず後先考えれなかった 俺の…


苦い想いが胸に込み上げ
ズキズキと痛みを伴って全身を支配していく


さむっ…
吹き抜ける風にコートの襟元を閉めた


この寒さの所為だ
前の冬より身に浸みる、今年の冬のセイにした


早く部屋に帰り、熱い風呂に入って寝ちまおう


部屋のカギをポケットから出しながら
自室の郵便受けを開ける
もう身に着いた流れ作業


公共料金の請求書と、いかがわしいチラシが数枚
溜息と共に、それらをクシャクシャと丸めると
その下から、見知った金の髪が見えた


ん!? 


そのハガキを手に取り、驚いた…


“ 俺達、結婚しました… ”


そんなデカデカとした見出しのハガキ事
全部荷物を、落としそうになり
慌てて、まとめて引っ掴んで 部屋まで駆け上がった


玄関をガチャガチャと乱暴に開け
鍵とカバンをソファーに投げると


机の上に、ハガキを叩きつけるように置く


はぁ…!? 結婚…?


自分の、感情が 怒っているのか喜んでいるのか悲しんでるのかよく分らなかったが


そのハガキを、もう一度よく見た時
思わず、ニヤリと笑っていた


携帯の着信音が鳴る


取った先から
「シカちゃん!!見たか?」とイキナリ叫ばれて 耳がキーンとした


俺は、ケータイを数十センチ離しガンガンと何かを叫んでいる悪友が落ち着くのを待った


あ、そう言えば 夕方からコイツから着信が 何度もあったっけ
めんどくせぇ…


「シカちゃん!聞いてんのかよ? 」


やっと普通のトーンに戻ったヤツが
「だいたいよ〜 人の着信フルシカトってありかよ〜」 など、ブチブチと文句を言いだした


ヤベッ、コイツ拗ねっとめんどくせぇんだった…
昔っからのコイツのクセを思い出したりして


「しょうがねぇだろ、サッキまで仕事だったんだからよ 
それより、久しぶりじゃねぇか 今何してんだ?」


話を反らすと、まんまと


「俺、去年 公務員試験受かって 
地元の市役所勤務〜 
今は、高齢者福祉課でばぁちゃん達のアイドルだぜっ!」


今、コイツぜってえウインクとかしてる
通話先の向こうのキバが、容易に想像がつく


ホント、変わんねぇな…


思わず、クックッと笑っちまった


「それよりも!ナルトだっ、」


昔からの悪友の片割れが脳裏に浮かぶ


俺達は、高校卒業後 互いに別々の道に進んだ


高校の3年間、なんだかんだ言っても シッカリと自分の将来や やりたいコトは 考えていた俺達


それぞれの担任のアスマやイルカ先生や紅先生が
揃いも揃って、驚きを口にした


アスマなんて、あからさまに
「おまえでも、考える事あんだな…」なんて頭をグリグリと撫でられた


アホか… 俺らだってガキじゃねぇ
それくらい… 
イヤ、ホント言うと 
2人がシッカリと進む道を決めていたのには… 正直、驚いたんだが…


俺らは、それぞれ別の大学へ進み
社会人と成った


大学時代は、まだ 互いに集まる時間も取れたが
社会に出ると、そうは行かなくなり
もう、会わなくなって 長い年月が経っていた


久方振りに聞いた、このキャンキャンと吠えるようなキバの声に
昔を懐かしみ、少し癒された


「聞いてんのかよっ!シカちゃん!!」
怒鳴るキバに、再度携帯を離し
「悪かった。ナルトだろ?俺も、今ハガキ見たとこだ 」
「相手、見たか? 」
「あぁ…」
「ん?何?その薄い反応?… もしかして、知ってたのか? 」
「あぁ…」
「いっ、いつからだよっ!!」
又怒鳴るキバに
「落ち着けって… 高校ん時から、つき合ってるらしいのは 気づいてた 」
「そんな、昔から〜っっ!知らなかったのは、俺だけかよっ!!」
「まぁ、俺だって 本人から聞いた訳じゃねぇよ 」
デッカイ溜息と共に、少し落ち着いたキバが


「でっ、いつ集まる?」
やっと本題に入った


それから暫く、ナルトを呼び出す日なんかを 相談し
久々の集合に、テンション高く携帯を切ったキバが
昔のまんまで、ちょっと安心した


すっかり遅くなっちまったんで、早めに風呂に入り
なんとなく、ベットまで持ってきたハガキ


ミネラルウォーターのキャップを捻り
ゴクゴクと飲み干すと タオルで頭を拭きながら
再度 そのハガキを見た


すんごい嬉しそうに笑ってるナルトに
照れながらも、寄りそう女性のお腹が膨らんでいて


幸せそうで、良かった


アイツは、親を知らない
その天真爛漫さからは、誰も想像できないし
そんなコト、おくびにも出さないが
時折目にする、影の部分に 人一倍温かい家庭 てのに憧れる アイツを知っていた


高校の時は、一端途切れたんだろう その想いを
ずっと、消さないで 一途に想っていられたアイツの純粋さが… 今の俺には、羨ましかった


アイツは
大切な人を、ずっと大切にしていけるヤツだ


諦めなくて、良かったな… ナルト 


俺は、今日途切れてしまった糸を まだ繋ぎとめようと心に決めて、部屋の電気を消した

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