12/25の日記

01:01
ポーカーフェイス 〜ネジ〜
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はじめは興味本位からだった


いつも表情を崩さない、そのクールビューティーな顔が


何をしたら変わるのか


それが知りたかった


ワザと、ネジの前で道化を演じてみたり

失敗してみたり

悪戯を仕掛けてみたりしたが


そのどれもが、冷ややかな眼差しと共に
怪訝な顔をされ、徒労に終わった


多分、ネジは 私の事“変な奴”ぐらいにしか思っていないだろう

近頃では、私を見る目が“可哀そうな子”を見る冷やかな眼差しになっている

おかしい…

何がいけないんだ? もっとこうグッと気持ちを掴む作戦が…

思わず奴が、ハッとしたりドキドキして顔が歪むような作戦を…



任務帰り、ネジを待ち伏せる

現れたネジに
「一緒に帰っていい?」
と聞くと

お得意の、怪訝そうな顔をされたが
諦めの溜息と共に

「行くぞっ!」
と歩き出したのは、ネジの家とは反対で


「…えっ?」
のんきに、自分は後で遠回りして帰ればいいや
なんて思った私は、拍子抜けし

ネジの後ろをトボトボと歩く


気を取りなおし
いつ計画を実行しようか、と考えてるうちに

私の家の側まで来てしまった

これでは、マズイっ!

「はっ、話があるの…」
イキナリ切りだした私に、少し驚いた顔をしたが
 スグいつものポーカーフェイスに戻り

「なんだ…」と振り向いたその胸の中に
思わず飛び込んだ

あ、しまった… 告白が先だったのに
勢い余った…

なんて後悔先にたたず  にしても

不意打ちなのに、シッカリと支えてくれる力強い腕

抱きしめられるその胸元から、石鹸の香りと井草の匂いがする

ネジの匂い…

クラクラする頭を振り、イケないイケない
こっからの作戦を練り直していると

耳にネジの鼓動が伝わる
心なしか、早いその音とは真逆に 
冷静な言葉が返ってくる

「そういうのは、 好きな男にしろ…」

両肩を掴んで引き離されると
ネジの表情を垣間見る間もなく

踵を返し、そのまま足早に去っていった

あぁ…また失敗だ…


だいたいネジは、なんなんだ

乙女が、胸に飛び込んだのにスルーとは…

敵は、なかなか手強い…



今日は、一緒の任務だ しかも好都合にAランク 

作戦を決行する

私は、一人ほくそ笑んだ



ヤバイ… この任務、洒落にならない…

交戦中、敵忍の多さに思わず弱音を吐く

これじゃあ、計画通り怪我をするどころか
命が危うい…



「大丈夫か!援護するから、後ろに下がれ!」

後方から響く頼もしい声に少し安堵した私に
 
「おい!気を抜くなっ!」

その一瞬の隙を、敵に切り込まれた

「ぐっつ…」

ヤバっ、怪我をしたフリが マジになっちゃったよ 

なんて薄れる意識の中で、思っていたケド

ダテに屈指の忍刀使いと言われてはいない

きっちりとやり返し、適忍を始末した所で暗闇に落ちた



なんだか、ふわふわする…

私、死んだのかな?

いや、にしちゃ… 「イタ〜っ…」思わず出た言葉に

「大丈夫か?」

私の上、しかも凄く至近距離からネジの声がする

今まで風を切っていた気配が消え

近場の木の根元に、ゆっくりと降ろされる

痛みに覚醒していく意識

「うっうっ…」

「やはり、止血しないとマズイな… 見せてみろ」

ネジが、私の上着の上から刀傷を確かめる
肩から背中の中心辺りまでの傷に

ネジの眉間に皺が寄る

キレたその服をめくり傷口を確かめようとしていたネジの手を阻止した

「エッチっ…」 その端正な顔を睨むと

「バッ…バカッ!治療だ!四の五の言わず見せてみろっ!」

ネジの顔が、紅くなった

あっ、こんな顔もするんだ…

ボケっと、ネジの顔をマジマジと見ていた私に苛立ち

有無を言わさず、キレた服をめくっていく

「だいたい、おまえは無茶をし過ぎる!!」

怒りながら、自分の袖を裂き止血をしていく

「あと、痛み止めと増血剤飲んでおけ」

薬を口に放りこまれた


一通り処置が終わると、薬が効きだしたのか
落ち着いてきた 安堵する私に

ネジは、自分の上着を投げてよこし

「それを、着ろ!」とそっぽを向いた

いや、でも… 汚れるし これ以上迷惑は…

などと考えていたら 読まれ

「いいから着ろ!目の毒だ」

自分の上着を引っ掴み、私から視線を反らしながらもグイグイと着るモノを押しつけてくるネジが可笑しくて

「今日は、自慢のポーカーフェイスも 崩れ捲りだねぇ
いや〜 思わぬ所で願いが叶った」

笑った私に

ネジの顔色が変わった


「…おまえが最近、俺に絡んできていたのは…そう言う訳か…」

あ… マズイ、怒られる!

そう思い目を伏せた時、ネジの手が私の頬に触れる

「俺は、てっきり… おまえは俺が好きなのだと…
そう思っていた…」

頬に添えられていた手が、顎を掬い

視線が絡む

ネジの端正な顔が、ゆっくりと近づいてきて

キッ、、、、キス… ?

ドキドキし、思わず目を瞑った私

数秒、数分経ち あれ…?

恐る恐る目を開けると

ネジがいつものポーカーフェイスで 私を見降ろしていて

はっ… 謀られた… 

紅くなる顔を両手で覆い この乙女の純情を踏みにじって  どうしてくれようっ!

そう考えていた矢先に

「好きでもナイ男に、気を持たせるなっ」

ネジの冷やかな口調が聞こえ

ごっ、ごめんなさい… そう謝ろうとして

少しの違和感に気づいた


好きでもナイ男に気を持たせるな…? あれ? て、事は…

気を持ったの? ネジが…?

ごちゃごちゃと考えていると 

「サッサと行くぞ」

バツの悪そうなネジの耳が紅くて

急に曝していた肌が恥ずかしくなり ネジの上着を急いで着込んだ

途端包まれたネジの匂いに

「気を持たせられてるいるのは、こっちだよ…」

1人溜息をついた





end

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