01/16の日記
23:09
ドライブ(?)シリーズ 〜アスマ〜
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「わぁ〜 凄いキレイ〜 」
子供のようにテンション高い私を、ちょっと呆れたような眼差しで見ているアスマ
「あんまり、身を乗り出してると落ちるぞっ 」
工業地帯の明かりが灯る中 静かに車は走る
エンジン音さえも聞こえない、静寂な車の中とはウラハラに
窓から身を乗り出し、広がる夜景に 騒ぐ私を押し留め
運転席の手元で、パワーウィンドウを閉めるアスマ
会社帰り、送ってってやると乗せられた
アスマの車
そのアウディは、とてもアスマらしくて
貴賓漂うセクシーな黒
車内からは、煙草の匂いと
どこからともなく薄っすらと甘い香りがする
それは、車内の芳香剤なのかと思ったら
アスマの香水で、銘柄は分らないが
男性用なその香りは、なんだかアスマの男の部分をひどく際立たせていた
「ちょっと寄り道だ 」
そう普段と変わらない表情で言い煙草に火をつけた
そして、今に至る
久しぶりのアスマは、ダークグレーに縦縞が品良く入ったスーツが とてもよく似合っていた
「アスマのスーツ姿、初めて見るかも… 」
チラッと視線を自分の着てるものに向けると
「そうか…? まぁ、朝はえぇし夜はおせぇからなぁ 」
欠伸を噛み殺しながら、煙草を揉消す
「身体… 大丈夫? 」
心配になって顔を覗き込んだ私の頭をワシワシと撫で
「心配してくれんのか…? 」
と微笑んだ
久しぶりに見るアスマの笑顔
最近は、ホント 仕事が忙しいらしく 眉間に皺を寄せている姿しか 見ていない
少しの沈黙の後
「おまえ、綺麗になったな… 」
いつもより少し低いアスマの声
私は、なんて答えていいか分らず 熱を帯びる頬を隠した
それっきり、また沈黙が続く車内に
どうして良いか分らず、流れる景色を眺めた
アスマがつけたジャズが、心地よく車の中を流れる
静寂に思わずウトウトしかけた時
「 おまえ… 男できたのか? 」
なんて、急に尋ねられて
思わず、咳き込んでしまった
「…ごほっ!なっ、なんで…? 」
「最近、 艶っぽくなったから…? 」
なっ… なんで疑問形?
再度ビックリしたが
「アスマが気づくなんて、私… 隠すのがヘタだね… 」
「 なんだ…やっぱ男ができたのか?」
私は、冗談めかして言うアスマの髭を引っ張った
「違う!好きな人ができたのっ 」
「 …どいつだ?そいつは? 」
引っ張られた髭を撫でながら 渋い顔
「 アスマなんかに教えないよ 」
ほくそ笑んだ私の腕を掴む
「…どいつだ? 」
腕が痛い
「 …アスマ …痛い 」
怯えた私の視線を感じ 舌打ちしながら手を離す
「どうしたの…? 」
こちらを向かないアスマを覗き込む
明らかに、いつもと違う態度に ドキドキする胸を抑えながら そっとアスマの手に触れると
「 …見るな、俺は今酷い顔をしてる 嫉妬深い男なんて… 嫌だろう… 」
嫉妬…?
「 … ウソ …そんな訳ナイ… 」
「 …本当だ 」
なんて、真顔で言われて 頬が熱い
「本当…って… 」
「おまえが好きだ… 」
私は、アスマの頬を掴むと 強引に自分の方を向かせた
両手でその髭面を挟み込み
「なんで、アスマが言っちゃうの?私が言いたかったのに…」
「 ハァ?」
その手をグニグニと動かし
「 私の初めての告白を、アスマにしたかったのに… 」
「 イテぇよっ 」
私の両手を掴んで剥がすと、その手ごと抱きしめた
「 おまえの初めては、違うとこでたくさんもらうからいいんだよ… 」
胸内の私を見降ろしながら、ニヤニヤ笑うアスマに
嫌な予感がする
「アスマ… 鼻の下伸びてる!厭らしい事考えてるでしょっ!」
「よく分ったな、まぁ取りあえず コレからな 」
猛然と抗議する私の唇を、アスマが奪っていった
end
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