01/20の日記

23:04
ドライブ(?)シリーズ 〜ゲンマ〜
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「…乗れよっ 」


その車高の高い車の


助手席側のドアを、腕を伸ばして開けるゲンマ


スタスタと歩道を歩く私に、無言で乗れと促す


さもそれが当り前のように振る舞うその態度  


私が従うと、そう確信している


断られるなんて、微塵も思っていないのだろう  


我が物顔で、ニッコリと笑うその顔は やっぱりキレイで


こんな時でも、そんな事を思ってしまう自分が


なんだか、悔しくて


泣けてくる


それなのに、涙を零す自分に怒りが込み上げてきて


…矛盾している


「…泣くなよ…」


誰のセイだとおもってるんだ


キッとゲンマを睨むと


「いいから、乗れ…」


真剣な顔


それでも通り過ぎる私の腕を、車から降り掴んだ


強引に車に乗せると


自分も乗り込む


白のエルグランド


そのドアが、重低音な響きをたてて
バタンと閉まる


ゲンマは、煙草に火をつけ ゆっくりと吸いこむと


溜息と一緒に吐き出した


「…おまえが、何を疑ってるのかは分かんねぇが…
誤解だ…」


「ウソ…」


「誤解だ…」


「ウソ…」


いく度目かのやり取りの後


煙草を消すと


そっぽを向く私の肩を抱き寄せ、しっかりと抱きしめた


「…頼むよ…おまえの笑顔が見れないと…眠れねぇんだよ」


そんな事ばかり言って 誤魔化して


毎回そうだ…


身体を離しながら、覗き込むゲンマの視線を避け俯く


片手で私の頭を抱き寄せたまま


エンジをかけ、ゆっくりと走りだす車


つけっ放しのFМから、何年か前に流行った


別れた後も、ずっと好きで… というような内容の歌が流れる


バカらしい…


別れたらそれまでだ


そんな未練がましいなら、別れなきゃいいのに


胸中で、そんな悪態をつくと


「俺…この気持ちわかるは…」


赤で停まる信号から 視線を反らさず


「マジで、好きになった女の事は なかなか忘れられないもんだ…」


シガーポケットから火種を取り出し


また、煙草に火をつけた 


青信号で走り出す車
 

不意にゲンマの大きな手が、頭をポンポンと優しく叩く


ズルイ… 私がこの仕草に弱いと知っていて…


潤む視界


急に車が、ハザードを出し路肩に寄る


どうしたのかと、見上げた私の涙を拭うと


「俺の1番は、いつでも おまえだ…」


ギュッと抱きしめられ 耳元で囁かれた言葉に


私は、また 絆される







end

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