01/26の日記
00:56
代償 〜カカシ〜
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「おまえに、拒否権はナイよ… 」
そう私の耳元で囁く男の 端正な横顔をじっと見た
「そんなに、睨んでもダメ 」
なんて、ニッコリほほ笑みながらも 私の上着の胸元から忍び込んでくる手
睨んだつもりなんてない…
じっと、その色違いの瞳を見つめているだけ
その真意を計りかねているから…
彼は、私の視線を受け流し
「可哀そうなこだね…」そう囁きながら
私の胸元を、ぐいっと広げ 胸を露わにしていく
恥ずかしくて、肌を隠すのは 女性としてごく自然な行為だと思うが
その手を払いのけ
「おまえに、拒否権はないよ…」
またその言葉を繰り返した
なんでこの人は、この言葉を繰り返すのだろう
乱暴な言葉を吐きながらも
触れてくるその指先は、密かに震えていて
その唇から紡がれる冷淡な言葉とは逆に
温かい手を、私は知っているから
… 拒んだりしないのに
私は、木ノ葉に潜入した敵国の忍びだ
この、“コピー忍者”の情報が欲しくて この男に近づいた
華街に潜入し、用心に用心重ね 周到に近づく
この街にしては、少々年がいってる私は
他のうら若き女子達と違い
いつまでも、顔見せの雛段に座っている事が 多かった
そんな中、誰かのつき合いで めんどくさ気に来ていたカカシの目に留まる
「博愛主義だから、俺…」なんて薄く笑って
最初は、同情から始まった指名も
歳が近い事と、早くに両親を亡くしてるという生い立ちが似ていた事で
距離を縮めていった
始めの頃は、誰かのつき合いでしか来なかったこの街にも
自分から、足を向けてくれるようになって
何度か逢瀬を重ねるうちに
子供の頃の楽しかった話や、よくやった遊びなど
たわいのない話をたくさん話した
多分… 私の隙間に、この人がおさまる感覚に
任務を忘れていたのかもしれない
「子供の頃、よく食べた料理は… 」
言いかけ口籠った私を
隣のカカシが、覗き込んで 続きを促すように優しく微笑むものだから
勘違いしたのだ
この人の空いた隙間にも、私がおさまるのではないかと
「私は、母親の顔を知らない… 父の他に男を作って 出て行き、捨てられ自殺したような母だったから… だから私は、母の手料理を… 」
言い終わらないウチに、カカシの腕が私を抱き寄せ
背を撫でた
その温かさに、縋りつきたくなる気持ちを
グッと抑える
カカシは「俺達… ホント似てるかも…」苦笑いしながら
濡れた私の目元に唇を寄せた
ここは、華街… ウソ偽りの愛を囁く場で
自分の立場… そんなものも置き去りにして
もう、どうでもいい
そう思い始めていた
でも、忘れてはいけなかった
代償は… すべてを失う事だと
今日も、何度目かの指名を受け
逢瀬を重ねていた時
「 何が目的… 」
私の肩口に、顔を埋めながら カカシは低い声で囁いた
数分前までの甘いフインキは、たちまち氷つき
私の上に覆い被さるその身体で、身動き取れないように 抑え込まれていた
なんとか、体制を立て直そうとするが
グイッと体重をかけられ 逃げる術も無い
少しの隙も無いこの男の手中から 遁れる事を諦めた私は
「 どこへでも、引き渡すといい… 」
覚悟を決めた 願わくば、この男の手に落ちる事を切望したが
逃げる事など、最初から諦めていたのかもしれない
私が、捕らわれているのは この身だけでは無く
心ごと全部だったから
ゆっくりと顔を上げた私のターゲットだった男
はたけカカシは
悲しそうに揺らいでいるその瞳を、私に向けると
「俺、慣れてるから… こういうの… 」
瞳とは逆な、冷淡な口調で淡々と言い放った
「何が聞きだしたかったの? あんたになら、なんでも喋ってやったのに… 聞き出し方が、ヘタだね… 」
微笑むその瞳が、冷えた色を湛えた瞬間
左目の紅が、くるくる回る
気がついた時は、この薄暗い部屋で組み敷かれていた
てっきり、尋問部などに引き渡されると思っていた私は 驚きを隠せない
「 なぜ…? 」
「ずっと… 俺のもので… 」
その端正な口元が、片方だけつり上がる
「おまえに、拒否権は無いよ… 」
繰り返される言葉
end
カカシ 26才 ヒロイン 23才
くらいの設定で…
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