04/15の日記

21:47
嘘 
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カカシさんは、約束通り 夜半過ぎ 


里に戻ったその足で 逢いに来てくれた


家の窓を、遠慮がちに叩くカカシさんのシルエットが、窓から透けて見え


たった2週間なのに 


もう、どうしょうもなく 恋しくて…


今まで堪えれていたもんや、我慢していた事が


この人の顔を見たら 


足元から崩れそうで


窓を開ける事が 出来なかった


ともすれば、その腕に縋って ガキみたいに


ワンワン泣いちまいそうな自分を叱咤し


曖昧な理由をつけて カカシさんを追い返す


少し訝しんではいたが


「…分った」と答えた後


「これ、おまえに似合うかと思って… ここに置いておくから 」


それだけ言い残すと、スグに消えた気配


俺は、カカシさんが帰った後も
スグには窓を開けられず


暫く、窓際に突っ立ったままで


どれくらいの時間そうしていたか


春なのにらしく無い寒さに身体が震え


やっと、我に返る


慌てて、あの人の置き土産を手に取ると


品の良い、和紙の包装紙に包まれた


藍色に染められた 髪留めの紐だった


一目で分る、高価な品


どんな顔してこれを選んでくれたのか…


想像すると可笑しくて


あはははっ


笑ったのに


泣きそうになって、慌てて窓を閉めた


ギュッと髪紐を握り締める


逢える訳が無い


こんなに汚れた俺で



次の日から、俺は カカシさんを避けた


なるべく、カチ合うような場は行かなかったし


あの人は、俺が1人の時に声をかけてくる事が多かったから


1人になる事は 避け
いつも、誰かしらと一緒に居た


その日も、俺からゲンマさんを誘って 仕事帰り飲みに行った


「珍しいよな〜 おまえから誘ってくるなんてよ」


千本をユラユラさせながら、ニヤニヤしてくるその顔に 


ワザとらしく溜息を吐きながらも 変わらないこの人の態度に 酷く安堵する



家に1人居ると、苛まれる暗くて底の無い悪夢


何度吐いても、どんなに身体を拭っても


消えない嫌悪感と絶望


1人で過ごす時間の苦痛に


思わず、この人に声を掛けていた



もう、夕日のすっかり沈んだ里は


夜の街特有の賑やかさで、あちらこちらでネオンやら提灯の明りが灯る


時折、会釈して通り過ぎていく後輩や 同僚達


里の歓楽街なんて限られているから


自ずと、顔見知りと出くわす事も多くなるが


今の俺には、ともすりゃあ
死んじまいたくなる程沈み込むこの気持ちに 


このガヤガヤとした喧騒が、丁度良かった


行く店が決まっていた訳じゃ無く


なんとなく歩きだした俺達は


その立ち並ぶ繁華街の店並を前にして


「どこ行きますか?」


なんて、やっと店の思案を始めた


「俺は、そんなに呑めないんで
魚が美味い処がいいんですが」


そう言ったら


思いっ切り眉間に皺を寄せたゲンマさんが


「おまえ、ホント じじ臭いよな
若者なら、肉だろ肉!」


なんて背中をベシベシ叩かれて


「ゲンマさん、そう若くないんすから サッパリ系にしとかないと
次の日、胃ヤラレます


最後まで言い終わらないウチに、肩に乗ったゲンマさんの手に力が籠もり


「シカマルくん、ちょっと俺より高い地位と背になったからって
言うようになったねぇ」


そのまま肩を、力任せに揉まれた


イダダダダっ


こんなバカみたいなやり取りが、今の俺には


酷く有り難かった



笑っていた俺の腕を、急に思いっきり掴まれ


ドクリと心臓が鳴った


青褪めて振り向いた先には


カカシさんが居て


安堵する気持ちと、焦る思考が交差する


「シカマル、ちょっといい?」


否を許さない、強い力


あんたらしく無い…


こんな人目の多い場所で


しかも、このカンのいいゲンマさんの前で


俺は、掴まれた腕を 解こうとするが


それは、叶わず


普段と変わらない その飄々とした表情とは裏腹に


掴まれた腕に、力が籠る


成り行きを見守っていたゲンマさんに


「ゲンマ、ごめん この子借りるよ…」


それだけ告げると、躊躇する俺を引きずり


どんどんと歩きだす


人気の無い路地に押し込まれ


「どう言う事…」


壁に抑え付けられる


俺は、久しぶりに見るこの人を 直視できなくて


視線を反らした


「…どう言う事」


同じ言葉を繰り返す


長い沈黙の後


「…もう、 終わりにしたい…」


やっと絞り出した言葉


覚悟していた


この言葉も、この後に続くセリフも


考えて抜いて出した 最善の策


なのに… やっぱり胸がズキズキと痛んだ


「…理由は?」


俺は、息を深く吸うと


「…アスマが、 忘れられない…」


心の中でアスマに詫びながら


この人の射る様な眼差しに負けないように


腹に力を入れ、ジッとその片方だけの眼を見返した


抑え付けられている手に、力が込もる


ギシギシと軋む骨 


カカシさんは、軽く舌打ちをした後


顔を近づけてきた


唇が、触れる寸前 


顔を背けた俺


それでも尚、俺の顎を鷲掴み 唇を重ねようとするカカシさんに


「…アスマのコトが …今でも …好きなんだ」


カカシさんの拳が、俺のスグ脇の壁を殴る


ミシッと音がして
パラパラと木片が落ちた


殴られても、罵られても
仕方がない


もう、何度も考えて 決心した事


俯く俺の耳元で


「…許さない」


そう告げたカカシさんは


素早く俺の唇を奪い、舌を入れてきた


抵抗スル間も与えられず


ベストの裾から、忍び込む手


「ヤダッ…」


拒否の言葉を紡ごうとしたが


許されず


再び、乱暴に口づけられる


衣服の下を、見られる訳には いかない 絶対に


この人の本気の力に、俺も全身で抵抗するが ままならず


アンダーをたくし上げるられる寸前で


カカシさんの動きが、ピクリと止まる


カカシさんが、顔を上げたその先から


「その辺にしときませんか…カカシさん」


ゲンマさんの声がした







end



☆コメント☆
[エリー] 04-23 01:23 削除

(´Д`)シカマルに、なりたい…

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