05/02の日記

23:33
真意 
---------------





あの、最後の決戦から 


心身共にボロボロになった俺を


何も問わず 引き受けてくれたのは


切り捨てたくても捨てる事が出来なかった


ずっと心の奥底で、忘れる事のなかった


この生まれ育った里だった


元同班のメンバーや俺を教えた上忍師の優しさが、かえって


血塗られた心に浸みて 痛む


自棄になって、半ば生きる事を諦めていた俺を


病院にいた時から、ずっと傍で見守っていたサクラは


退院後、「一緒に暮らす」と半ば強引に俺を連れ帰り


周囲を驚かせた


そっからのサクラは、まるで俺の知らないサクラで


同じ班で、気は強いが どっか腰が引けていて
修行よりも体型がどうだとか、髪形がどうだとかに比重が割かれていた
あの頃のサクラとは、全然別人で


俺がどんなに凄んでも、無視しても 一向に気にも止めず


サクラの思惑通りに、事を進めていった


そして、いつの間にか


表向きは、恋人同士として


裏では、俺の監視役としての生活が 始まった



こんな俺を、恋人にするなど


誰もが、反対する  と タカを括っていたが


意外にも、サクラの親も 火影も ナルトでさえも


皆から、後押しされた


カカシからは


「長い間、サクラに心労かけて… 今度は、その想いに報いてやっても 罰は当らないんじゃないの…」


痛いところを突いてくる その横顔を睨む


「チッ…」


確かに俺は、コイツの切実な想いも 願いも 断ち切って里を抜けた


その後も、何度も俺を追ってくるコイツらを


うとましくさえ思っていた


俺は、もうとっくにコイツは


俺なんか諦めて 自分の道を進んでいるものと思っていた


なのに…


なんで今だに、俺なんかに執着するのか…


こんな… おまえの事を、傷つけるだけ傷つけた俺を…



一緒に暮らして 数ヶ月


仕方無しに、渋々受け入れた当初から


ずっとその存在を無視して過してきた


今日も、手つかずの夕飯が 2人分 テーブルに並ぶ


その前に、突っ伏し うたた寝をしているサクラ


最近、コイツの任務は 多忙を極めている


通常の病院などでの医療班としての任務に加え、小隊の医療忍の役割もこなす


特にコイツは、五代目火影の優秀な愛弟子として
その腕を見込まれ


高ランクな任務に着く事が多い


「俺の事なんて、 ほっとけばいいものを…」


イライラする


どいつもこいつも…



今まで、『話がある』と呼び出されていた


猪突猛進バカの 金髪を思い出す


「俺は…サクラちゃんには、サスケしか居ねぇ と思ったから 諦めた… 
なのに、今のおまえは ひでぇよ…
これ以上、サクラちゃんを悲しませるなら…
俺が力づくで、掻っ攫う…」


真っ直ぐな青い瞳が、どんどん無遠慮に俺の心にズカズカと踏み込んでくる


俺は、何も答えなかった


本当は、こいつの胸倉を掴み


“おまえに、何が分る…”


そう言ってやりたかった


なのに、俺は 何も言えず


「勝手にしろ…」とやり過ごした


イヤ… やり過ごしたんじゃ無い


逃げただけだ…


俺に、何が言える


ホントは、ずっと心の片隅に居たその存在を


今更、“忘れた事など無かった…”と 言えというのか


こんな… あいつを手に架けようとしたこの俺が


酷く滑稽だ



「…サスケくん…?」


目を覚ましたサクラが、今ご飯温めるね なんて笑うから


頭に、一気に血が上り


サクラの腕を、乱暴に引き寄せると


そのまま、引きずるように 自分の寝室まで連れて行き


その身体を、ベットに放り投げる


ベットのスプリングで、弾むその四肢を抑え付け


翡翠色の瞳を睨みつけた


「こうして欲しかったんだろ… 望み通り、抱いてやるよ」


哀しそうな表情を浮かべる サクラの首筋に、顔を埋めた


酷い男だ


卑怯で臆病でちっぽけな俺の事など


早く、諦めればいい… 俺の事なんか…


なのにコイツは、俺の背を優しく撫で


「…ごめんね」


なんて、擦れた声で呟くから


「何を謝る!おまえに、謝る理由があるのか!」


思わず、身体を離して 睨みつけたその瞳からは
いく筋もの涙が伝い落ちていく


「…あの時 …止めてあげられなくて」


サクラの手が、俺の頬に触れ


「…サスケくんを…忘れて、あげられなくて…」


涙でグシャグシャな顔で、それでも綺麗に微笑んで


「でも…今度は、諦めたく無いの…
私、もっともっと…サスケくんを守れるくらい…強くなるから… あなたの その、背負っているものを
一緒に分ちあえるくらい…強くなるから…
傍に…居させて…」


バカだ… ホントに 


俺も、コイツも…


「…やっぱり、おまえは あのウスラトンカチには やれない…」




end

次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ