05/08の日記

23:52
痴話ケンカシリーズ 〜我愛羅〜 
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「 ……… 」


「 ……… 」


壁時計の音が、静まりかえる室内に響く


いつもは気にならないその音が、今日は恨めしいほど耳に付いて


嫌が負うでも、時間の経過を知らしめる


そう、もうかれこれ半日 この沈黙は続いていて


本来、我愛羅とのコミ二ケーションは 私がしゃべる事で成り立っている訳で


こんなに長時間話さない事は、今まで一度も無い


キッチンのテーブルから、隣の部屋へ聞こえるように溜息を吐く


わざとらしいほど大袈裟な溜息は


隣室のソファーに座り本を読んでいる我愛羅に聞こえただろうか


普段から無口な我愛羅が、自分から話してくる事は殆ど無く


だから、この沈黙も 


私がなんとかするしか無い訳で…


分っている 分っているのだ


別に我愛羅が責められるような話では無い


分っているのだケド…


意を決して、立ち上がり 傍まで行くと


「 我愛羅… 」


声を掛けた途端、閉じられた本


こちらを見るいつもと変わらないその表情は


何を考えているのかなんて、ちっとも分らない


私は、我愛羅の隣に座ると


ゆっくりと話しだす


「 我愛羅… 今日 新しい秘書の人、来てたね… 」


「 あぁ、見たのか 」


我愛羅の視線を真っ直ぐに受け、ちょっとドギマギする


「 偶然ね… 綺麗な人だね… 」


思わず、その美人秘書とツーショットで並ぶ昼間の光景が思い出され


言葉に詰まった


「 スタイルも、抜群で… 足も細かったね…ウエストもキユッとなってて… 」


何の話をしている とばかりに、怪訝そうな我愛羅


「 胸も大きかったし… 」


珍しく我愛羅が、少し眉を寄せた 


そんな微妙な変化も見逃さず


「 やっぱり、男の人って… 胸が大きい方が、好きだよね… 」


気まずそうな顔をしたのを、更に追討ちをかける


「 我愛羅、ああいうのスキだよね 」


薄っすらと耳を赤くしたのが証だ


それを見逃さず


「 …やっぱり… 」


ジロリと睨むと


更に顔を赤くして


「 ち、違っ… 」


シドロモドロで、慌てる我愛羅なんて久々に見たよ


私は、そっぽを向いて 


好きで胸が小さい訳じゃ無い とか 
男の人って皆目の色変えるよねぇ とか


ボソボソと呟くと


「 聞こえてるぞ 」


耳を引っ張られ、我愛羅の方を向かされた


「 痛いよ我愛羅!大体、胸なんて大きければいいってもんじゃ無いのよっ 」


何か言い返そうとしていた我愛羅が、私の剣幕に溜息を吐き


「 俺には、おまえが何を怒っているのか分らない… 」


しばしの沈黙


恋愛事は、不得意だ と公言する我愛羅


今多分、色々な事を考えているのかも知れない


でも、私ももう納まりがつかなくて


「 もういいよ 」


捨て台詞のように呟いて、立ち上がろうとしたら


腕を掴まれて


「 おまえ… 嫉妬しているのか…? 」


なんて真顔で聞かれて…


「 しないハズ無いでしょ… 」


赤くなる顔を見られたく無くて、またそっぽを向く私の耳に


「 俺は… 手の平に収まるぐらいの… おまえのサイズが… 好きだ 」


消え入りそうな声が聞こえた







end

















 

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