06/02の日記

09:03
偽り @
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ゲンマさんは、やはり何か感づいたようで


あれから、里内に居る時は なるべく俺の傍に居ようとしてくれた


それを、とやかく勘ぐる輩もいたが


ゲンマさんは、気にする事無く
俺を引き寄せ


「こいつ俺のもんだから、手出ししたら 承知しねぇぞ」


などと、デカイ声で言い
周囲や俺を慌てさせた


そんなんで、俺達は
スッカリ 回り公認の間柄になっていて


そのせいなのか、奴等の誘いもピタリと止んでいた


俺は、あの地獄のような日々から逃れられ
胸を撫で下ろす日々が続いたが


ゲンマさんに申し訳なくて、何度か きちんと話をして謝罪しようと思った


けど… あんな醜悪な真実を話せる訳も無く


ひたすら、「すみません…」と謝る事しかできなかった


それを、ゲンマさんは責めず 


問いただす事も怒る事も無かったが


ただ一度、
奴等の矛先がゲンマさんに向かないか心配になり


意図的に距離を置こうとした事があった


そんな俺を、まるで猫の首根っこでも摘まむようにひっ掴み


「ガキが、余計な心配すんなっ」とゲンコツを落とされ、凄く怒られた


何もかにも、お見通しな感じのゲンマさんに驚く


この人は…
どこまで知っているのだろう


全部知った上で…


「そんな事は、有り得ねぇな…」


独り言のように、吐き出された言葉


いつもと変わり無い、飄々としたゲンマさんの横顔を見ていると


俺の視線に気づいて


「なんだ?俺に、惚れたか…」なんてニヤニヤして


「別に俺は、構わねぇぜ」と、どこまでが本気なんだか分からない冗談を軽く言ってのけたりして


それでも、さっぱり何を考えているか分からないこの人に


俺は、酷く癒されていた




「 … … はぁ〜」


何度目かの溜息に、ゲンマさんが笑いながら俺の顔を覗き込む


「奈良〜 もっとニッコリしろよ 折角の美人が台無しだぞ」


俺の口角を親指で引き上げて、自分がニッコリと笑ってりゃあ世話ねぇ


俺は、込み上げる怒りを押し殺して


「 … 無理っす」


不機嫌に答え、その手から逃れようとするが 顎を支えられ


「イヤ〜 しっかし…」


そう呟いた後、マジマジと顔を見られる


皮膚に、これでもかと塗られた白粉


目元を染める赤


それよりももっとどギツイ まるで人を喰ったような深紅の紅を引く


そんな俺の面を、満足そうに眺めてから


「予想外だな〜 おまえがこんなに化けるとは…」感心した様子で腕組み


「惚れなおすねぇ〜」なんて、しみじみと言われるが


こっちは、綺麗に結われた髪からの鬢つけ油の匂いがキツイのと


何枚も重ねて着せられた 豪華な刺繍入りの着物が重すぎて 倒れそうだってえのに…


ちくしょー 覚えてやがれっ


こんな事になっている理由は、五代目の一言からで


『遊郭への潜入任務を言い渡す』


そんなのは、よくある話で


別段気にする事も無く任務の詳細を聞いていた俺の耳に


不穏な言葉が入ってくるまでは…


「今、里でこの任務に就けるくの一が居なくてなぁ… シカマル、おまえがやれ」


「 … … 」


「 … … 」


その場に居た誰もが固まり


俺はというと、余りの事にビックリし過ぎて 声も出なかった


我に返ったのは、一緒に呼ばれたゲンマさんの デカイ笑い声で


その後どんなに食い下がろうと 泣きそうな勢いで嘆願しようと


五代目は知らん顔で


「後は、ゲンマに任せる」


その一点張りだった


今思い出しても怒りが込み上げる


そんな眉間に皺を寄せた おおよそ女性らしさの欠片もないそんな俺に


「おまえの髪が生かせ良かったな…」


髪に刺さる幾つもの簪を、そっと直すゲンマさん


どうせ面白がってバカにしてんだろうと腹立たしい思いで睨めば


その顔はなんだか少しはにかんでいて…


俺の方が恥ずかしくなり、慌てて俯いた


それを不安に思っていると感じたのか


「大丈夫だ奈良、俺が守るから…」


ゲンマさんの囁きが耳に残る



最初は、顔見せの場に座り向うの出方を窺う


ターゲットが現れたら、そいつを床に誘い うまく情報を聞き出す それが俺の役目


だが、相手は用心に用心を重ねているようで なかなか現れない


ずっと顔見せ座に居る訳にもいかず


時々ゲンマさんが、客のフリをして俺を指名する


一時の休息とばかりに、部屋にしけ込むなり


重たい裾をたくし上げガバッと胡坐をかく俺の姿に


「百年の恋も冷めるぞ…」ゲンナリした顔で溜息を吐かれたりしていたが


それ以外は、特に動きは無く日々は過ぎていった


そんな平穏が破られたのは、ターゲットが現れたからでは無く


暫くその存在を忘れていた奴ら


そのリーダー格を目にしたからだ


そいつは、最初 店の前を通り過ぎたが


再度確かめるように、格子の前まで戻ってくると


俺を見るなりニヤリと下衆な笑みを浮かべた


背筋に悪寒が走る


俺は、おおよそついてねぇ


今日は、ゲンマさんは別任務で居ない


代わりに来た交代要員も、「今日は動きはねぇみてぇだ」と帰してしまったばかりだった


奴は、俺から視線を外さず ゆっくりと暖簾をくぐり店に入ってくると


対応に出た女将に、俺を指差し何か言いながら またニヤリと笑った


嫌な汗が流れ出す


小刻みに震える手を、ギュッと握り締め 自分が呼ばれる事を覚悟したその時


「すまないが、あの娘を」割って入った聞き覚えのある声


その声の主に、憮然と振り返った奴は その姿を目にすると苦々しい顔で舌打ち一つ残し消えていった


「 … カカシさん 」







つづく




お待たせしました<(_ _)>

更新再開します(^^)/



☆コメント☆
[ラッチ] 08-26 07:37 削除
あぁー、胸キュンっすわ
ありがとうございます

[ぶり] 08-29 12:19 削除
はじめまして、こんにちは。
シカマルが好きで読ませていただいたんですが、すごく素敵すぎます!
もう続きは執筆されないのですか?
お願いします。楽しみにして待ってます。

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