06/12の日記

02:03
きっと… 〜社会人篇(キバ)〜
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難関の、公務員試験を突破した俺は


最初、高齢者福祉課に回され 意気消沈だった


だってよぉ… ジジババばっかで ピチピチギャルが居ないんだぜ


もっとこう、庶務課とか秘書課とか…?


女の子が一杯いる部署が良かったのに


あり得ねぇよ〜


俺は、初めて出勤するその朝まで ずっと文句言ってて


ねぇちゃんに殴られたっけ


でも、住めば都って言うように その部署はそこそこ楽しかった


ホラ、俺ってば万人に好かれるアイドル体質だから


ばぁちゃん連中から、モテモテだったぜ


バレンタインの時なんか、俺の過去最高を塗り替える21コを記録したほどだ


そのどれもが、70オーバーなご婦人方で


チョコに混じって、饅頭や羊羹があったのが… ざ、残念だったケド…


でも、翌年の人事で 児童福祉課に回されて


ジジババから 今度は、ガキかよ 極端過ぎて
気乗りしなかったが


そこは、人事… 俺 長いモノには巻かれるタイプなんだよね〜


ワザワザ猛勉強して、この職についたのは


女性受けのいい、安定職だからで


突然去年結婚しちまいやがったナルトや 


年上の女に夢中な、シカマルが


羨ましい訳では、断じて無い…が


色恋沙汰に無縁で、綺麗サッパリ何も無い ここ数年の状況を、是が非でも打破したい…


だいたい、高校のあの大失恋以来


俺は、絶不調だ


もれなく楽しい大学生活も、合コンの仕切り人になってたダケで


広く浅く女も男も友達は、一杯いたが


そこ止まり


女の子とは、決まって『お友達』で終わる


大嫌いだ!“お友達”なんて言葉!


なんだかあれから 
ろくな恋愛をしてない気がする


俺だって、ゾッコンな恋人が欲しいし サッサと身を固めて 暖かい家庭を 作りたい!!


子供は、3人!男男少し年の離れた女の子の順が理想だ!


その末っ子の女の子を、大事に大事に育てるんだ




てかっ、その前に 彼女だよなぁ…


ガックリと肩を落とす俺に


「すみません…」


か細い声が聞こえた


振り向いた先に 俺好みの美人


ラッキー!すぐさま対応に出る


その美人さんは、俺の顔を見ると なぜか少し躊躇した


「どういった御用件ですか?」


ばぁちゃん達イチコロの、キラースマイルで応えると


言い淀んでから


「…こ、子供の親権の事で…」


泣きそうな顔で、俯いた



俺は、イスを勧め 自分もその前に座る


あれ? この人… どっかで見た気が…


相談用紙に必要事項を書き込むその横顔を、繁々と眺めてから


手元の書類の名を、覗き見る


苗字は、よくある日本人に多い姓だし 名前も、これまたよくある名…


そう言えば、あの子もこんな名前だったなぁ


なんて、昔を懐かしんでいたら…


「…あぁぁっっ!!」


デッカイ声を出してイスから立ち上がっていた


「…気づきました?」


「気づかなかった!イヤ、たった今気づいた!」


訳の分からないセリフを吐くと


高校の頃と変わらず、チャーミングに微笑んだ


か…可愛いーーーっっ!


お久しぶりです なんて、頭を下げられた


キチンとしてて、礼儀正しいとことか


全然変わってねぇ〜


顎の辺りから、酸っぱいような苦いような感覚が、こみあげる


分からなかったのは、しっかり化粧したその表面で


よく見れば、パーツは昔のままだ


「あっ…あ、あの…ど、どういった…ご、ご相談で…」


シドロモドロの俺に、笑って


「顔見知りだと、やりにくく無いですか?」


俺は、ぶんぶん首を振ると


「そっちが… イヤ…、じゃなければ…」


彼女は、少し悩んだ後


「よろしくお願いします」と、また笑った


俺の心臓は、尋常じゃない速さで忙しなく動く


やべっ!俺、顔赤い?赤い?



彼女が帰った後


その相談用紙を、眺める


結局 彼女は、

俺がフラれる原因になった、あんときの男と

短大の卒業まぢかに妊娠が発覚し 不安もあったが
そのまま結婚した

でも、相手は 相変らずだったようで

過度の束縛を繰り返し、彼女を泣かせてばかりだったらしい

言われの無い嫉妬で、離婚を切り出したのは、向こうなのに

話し合いが終わり、すべて決まった後

急に子供の親権を主張しゴネだした

元旦那の束縛の為 専業主婦だった彼女は、経済的理由で 子供を取られるんじゃないかと不安になり

相談と職業斡旋+保育園の申し込みに来た



う〜ん…


俺は、腕組みし その紙を何度も読み返す


キタ?コレ…?


久々の、ビックウェーブ到来?


イク? イヤ … … …  イクでしょう!!


ヨッシャー!! 今度こそ、リベンジだっ!!


シカマル程じゃ無いケド 戦術煉んのも得意だし


俺、昔から 犬と子供には好かれんだよね



幸せにするぜ!!


1人ガッツポーズの俺に


「犬塚くん、仕事してね〜」


笑顔だが、目が1ミリも笑ってない課長の鉄拳が落ちた







end

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