06/30の日記

11:53
あの頃 〜ナルト×カカシ〜
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あの頃の俺には、先生が全てで 


毎日 毎日…  先生のコトばかり考え過していた


早朝、火影室へと続く長い廊下を


あの、先生特有のマントをなびかせ


足早に歩いていくその姿を、遠くから眺める


今日は、先生の姿を見れた


昨日は、仕事が立て込んでいたようで


その姿を見る事は無かった


徹夜でもしたのかな
先生の身体が、心配だ


その前は、俺が任務で里に居なかったので


姿を見るのは、一週間振りだ


ドキドキするその臓器辺りを押える


その頃の俺は、この密かな至福の時間の為に生きていた


早く先生の元へ その姿が見たい 少しでも早く…


振り降ろされる忍刀も、繰出される忍術も すべてその為


俺のすべては、全部先生に繋がっていた



いくら気配を消しても


先生は、いつも俺に気づいていて


手を振ってくれる


前に、なんで傍まで来ないの? なんて聞かれたケド


多忙な先生の時間を、ほんの少しでも


俺に向けてくれる


それだけで、充分だった


もう先生は、俺達の先生じゃない


里の、皆の火影なんだ


でも、それが少し淋しくて 未だ“先生”と呼ぶ俺
矛盾している…


割り切れているようで、諦めきれない


そんな半端な気持ちを、いつも抱えていた


暗部を志願したのは、火影となった先生の傍に居られるからで


そうでもしないと、先生の傍には もう居れない
そう思った


凄惨な暗部の忍も、先生の為だと乗り切れた


先生の力になりたかったし、認められたかった


毎日 毎日 血塗られていく自分


その層が厚くなって呼吸もできなくなる


苦しくて苦しくて それでも、先生の笑顔が見たくて


「よくやったね カカシ 」


その言葉が聞きたくて、触れて欲しくて


苦しさも、怪我の痛みも 全部 押し込めて無かった事にし


ずっとやり過ごしてきた


あの頃の俺は、任務で人を殺すコトよりも 生死の境を彷徨うような傷よりも


先生に嫌われること、傍に居られなくなるコトの方が
怖かった


今思うと、なんであんなに俺の中の大半をしめていたのだろう と思う


やはり、無き父の姿を 重ねていたのか


拠り所が無く、ただ依存していただけか


今では、ハッキリしない


それでも、時折 泣きそうなほど 俺を切なくさせるこの想いは


今でも消えないままで


ふとした隙に、襲ってくる



「先生… 」


その声に、我に返ると


「こんなとこで、寝てたら 風邪ひくってばよ」


覗き込まれた藍色の瞳が重なり 少し動揺した


「先生… なんの夢見てたの…?」


少しの沈黙の後


「昔の事を、少しね…」


そう言って誤魔化したのに


いつもの天真爛漫なクシャクシャな笑顔で


「そっか… 少し妬けるな…」


なんて、淋しそうに呟いた


今、ナルトは あの頃の俺と同じなのかもしれない


「バカ… 俺の過去なんかに 妬かなくてもいいでしょ… 」


ナルトの頭を撫でると


「妬くよ 先生の全部 過去もひっくるめてぜ〜んぶ 俺のモノにしたいから」


「そりゃまた、強欲な事で…」笑ったら 


真っ直ぐな瞳で、見つめられ


「先生の事だから、欲張りなんだって…」


ナルトも、ニッカリと笑って返す


あの頃の俺に、この強欲さがあれば なんか違っていたのかな…


なんて思ったケド


「じゃ、取りあえずキスしていい?」


不穏な言葉が耳に入り 慌てて


「なんでそうなるのよ…」


ナルトを横目で睨み 立ち上がろうとすると


黄色い閃光も真っ青な素早い動きで


俺にキスをした


「ホラ、俺 強欲だから…」


初めて会った時のように、悪戯っ子のように笑うナルトに


「血筋かね…」なんて 空に呟いた






end

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