07/15の日記

17:30
通り名 〜カカシ〜
---------------






事の始まりは、


若くして暗部入りした


この堅物な女の子が原因だった


年の頃は、サクラ達よりは少し上だろうが


童顔で、返って教え子達より幼く見えた


「俺… 子供に手を出す趣向は 無いんだケドなぁ…」


頭をガシガシ掻き


その華やかな部屋に敷かれた、紅い布団を見詰る


蝋燭がユラユラと揺れ もうすぐ、その蝋の部分が無くなりそうだ


俺は、ゆっくりと立ち上がる


と同時に、傍からビクリと揺れる気配


「あぁ…ごめん…新しい蝋燭を取ろうと思って…ごめんね…」


何に対して謝っているのか、自分でもよく分らなかったが


警戒心露わな彼女に、笑顔だけは絶やさないように心がけて話した


「私こそっ!すっ、すみません!」


勢いよく頭を下げ過ぎて


凄い音で、床におでこをぶつけた彼女


「だっ、大丈夫…?」


咄嗟に傍に駆け寄り、その額を確認すると


「あぁ…青タンになってるよ…」


腰のポーチから、傷薬を取り出し そのカタチの良いおでこに塗りつける


ギュッと閉じられた目、小刻みに震える身体


俺は、赤ずきんの狼か… この獲って喰われるみたいな反応は… 


参ったなぁ…


俺は、かつての同胞の
デッカイ黒目を思い出していた


-----数日前-----

「カカシ先輩に、お願いがあるんですよ」と

久々にテンゾウに呼び出され

秋刀魚定食とん汁付きを奢らせる代わりに

その内容を聞いた

暗部入りしたのは良いが 

まだ男性経験が無い彼女の

相手をして欲しい…」

そんな突拍子も無い話しだった-----


無論、即効断った 


だが…


「お願いしますよ…仲間内じゃ、後々遣り辛くなるんで…先輩、“木ノ葉一の技師”なんでしょう…」


そんなどこの誰とも分らない輩が、尾ひれ背びれを付けてまくって風潮した 悪意すら感じる噂を…


俺は、その噂の御蔭で カナリ迷惑したんだ!


何を期待してたのか


床を共にした女性から


「…えっ、…お終い…?」とか言われるし


あからさまな奴なんて、終わった後溜息吐かれる始末


…俺、あれからずっと女性恐怖症なのに…


グルグルと考え混んでいたら


俺のアンダーの袖口を、ギュッと掴んでくる彼女


その身体は、やっぱりまだ震えているのに


それでも必死で、指が白くなる程 握りしめた手が
意地らしくて


思わず抱き寄せようとしたその時


静まりかえった部屋に


「…あんっ、んっ…もうダメ…あぁんっ…」


女性の、鼻にかかった甘い声が響く


あぁ〜あ… 


俺は、天井を仰いだ


確かに、ここは遊郭の一室で 


こういう声が、薄い壁を伝って漏れ聞こえても おかしくないが…


恐る恐る彼女に、視線を向けると


最初の数秒、石の用に固まって


その数分後、耳まで真っ赤に染め


床にのめり込みそうな程、俯いていた


深い溜息を吐いた後


「やめとく…?」


俯くその顔を覗き込んで問いかけるが


頭の中で、葛藤しているのか


答えは返ってこず


「もう、やめようか… また俺じゃ無く
違う奴に頼めばいいで


「ダメっ!ダメなんです!」


袖口を掴んでいた手が、ベストに替り


また、ギュッと掴む


「なにがダメなの…?」


彼女の頭を、そっと撫でる


こういう事すると、大概 この年頃の女子は


子供扱いするなと怒る


実際、俺からみたら てんで子供なんだが


この年頃は、妙に大人ぶりたいらしく


俺は、決まって“女性の扱いがヘタなオヤジ”よばわりをされる


でも、可愛いと思ったら 男子でも女子でも頭を撫でたいと思うのは


ごく自然の事だと思うのだケドねぇ


そのやわらかい髪を、何度も撫でる


「私…今日の事、お願いしたんです…部隊長に…」


「…なんて?」


今まで俯いていた彼女が、シッカリと顔を上げ


「カカシさんが、いいと… カカシさんじゃなきゃ…イヤだと…」


今にも泣きそうに瞳を潤ませる彼女


…ヤバイ…グッときた


蝋燭の火が前ぶれも無く消える


ナイスタイミング


いい歳した俺の… 紅い顔を見られ無くて…







end

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ