10/15の日記

23:19
ずっと、あなたの背中を追い駆けたいと思った 〜シカク〜
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ずっと、あなたの背中を追い駆けたいと思った


この、秘めた想いを抱えても たとえ、報われ無くても




私は、ずっと異性に興味が無かった


周りの女子が


クラスで1番人気の うちはサスケ にキャーキャー言っているのを見ても


1学年上で、エリートな 日向ネジ を憧れの眼差しで見ていても


正直、全くピンとこなくて


それは、“年頃”と呼ばれる年齢になっても変わる事は無かった


アカデミーを卒業しても、中忍になってからも
ずっとそうで


私は、自分の中で
そういう機能だけが 欠落してしまっているのだ
と思っていた


まぁ、幼少期から
ずっと1人で過ごしていたのだ


他人に興味がナイのも、そこら辺(色恋沙汰)の感情がナイのも
自分の内では、納得していた


まぁ、このまま1人も悪くは無い


回りの友人のように、失恋しただの 別れただの いちいち振り回されるれるよりマシだ


そんな事を、思い初めていた矢先



「おまえを、“特上“にと推す声があってな… どうだ? 2マンセルの試験任務 受けてみるか?」


思いもかけない言葉に、驚き どう返答をして良いか考えあぐねていると


「入れ」


五代目が誰かを招き入れた


姿を現したのは、顔に大きな傷のある年配の男性で


その姿を見た時、なぜかドキリと心臓が鳴った


纏う鋭利な気とは逆に、呑気に欠伸を噛みころしたりして


チラッとこちらを見た横顔に、またドキリと胸が高鳴った


初対面なハズなその顔は、どこか見覚えがあって
過去の記憶と、照らし合わせていると


「おまえも、名前ぐらいは知ってるだろう 上忍班長のシカクだ」


五代目の言葉が耳に届く


知っている… 名前は… でも、実際見るのは初めてだ


自分ぐらいの下っ端の立場では、到底会う事も無い存在の人


私は、めずらしいものでも見るように ジッと見てしまっていたのだと思う


「あんまジロジロ見んな、穴が開くだろ…」


ニヤニヤと笑った顔  見覚えがあるっ


見覚えがある、んだケド  う〜ん…


思いだせそうで、思い出せない不快感に ちょっとイライラし始めた頃


「遅れてスンマセン 」


又扉を開けて入ってきたのは、同級のシカマルで…


…あっ!


交互に2人の顔を見比べていると


上忍班長に、ほっぺたをグニっと摘まれて


「前向け、前 」と五代目の方を向かされた


唖然とする私にお構いなく、指で前を指す


綱手様は、気にも留めず


「2人揃ったな… で、おまえを推した奴と こっちが、試験官兼2マンセルの相手だ 」


シカマル シカク と順番に顎で指し


「後は、シカクから聞け 」と まるで犬猫をあしらうように部屋から出される


私に拒否権は、無いのか…


うな垂れた私の肩を、シカマルが叩く


「まぁ、いいんじゃねぇの… 頑張れよ」


他人事のようなその顔に、益々深い溜息を吐いた


「だいたい… シカマルが、なんで私を特上に推すの?」


ニヤニヤ笑って


「同期の連中で、サッサと上に上がってくんねぇと 俺やネジが いつまでもシンドイんでな 」


その笑い方… ホント親子ソックリ


ゲンナリした顔の私を、ジッと見て


「まぁ… それだけじゃ無いが… 後は オヤジに任せる 」


それだけ言うと、足早に姿を消した


確かに、シカマルは忙しい人だ


上忍になった今では、各高ランク任務をこなし
参謀補佐までやっている


だからって… 私が、特別上忍?


野心も目標も無く、ただ与えられた任務を淡々とこなしていた私のどこが
推薦に値したのか、さっぱり分らない


で、どうしろと…?


振り返った私に


事の成り行きを、面白そうに見ていた上忍班長さんは


「じゃ、俺の番かな?」とまたもやニヤニヤ笑った


嫌味な感じがソックリだ…


何度目かの溜息を吐いた



試験は、通常の任務を行うカタチで


私のような中忍には、大それたSランク任務 しかも、2マンセルで動くのだから 片方のリスクは、相当になるハズだ


だから、奈良上忍班長なのか…? いや、普通の上忍の人でも良いと思うが


そんな危険な任務なの?


一抹の不安は、過るが  亡くなった両親の後を追うようにこの道に進んだ時から


死ぬ覚悟はとうに決めていた


別段慌てる事も無く、奈良上忍班長の話を聞く



任務内容は、暗殺計画のある大名の娘の身代わり


きらびやかな部屋に通されるとスグ 


今まで着た事もない、綺麗な着物を着せられ
髪を結われ 化粧をされる


どれもこれも、初めての経験に
どうして良いか分らず固まっていると


襖が開き、シカクが顔を出した


「 …奈良上忍班長 …あ …あの、似合って …無いですよねぇ… 」


似合っているハズが無い、こんな… 自分と
一番縁遠い姿…


長い沈黙に、てっきり笑い飛ばされると 俯いた私の耳に


「 … イヤっ、悪くねぇ… 」


上忍班長の、呟きが聞こえる


慌てて顔を上げた私の視界に、フイッとそっぽを向くその横顔が映り


また、胸がドキドキした


なんだか、その朱色に染まる耳の訳が知りたくて


表情を覗きみようとするが、顎を掴まれ


自分と違う方向にグイッと向かされた


「奈良上忍班長!痛いですよっ」非難の声をあげると


「おまえ、いつまで“奈良上忍班長”なんて
長ったらしい呼び方してやがんだ 」


顎を掴んでいた手が、グニグニとほっぺたをツネる


「けっ、化粧が崩れるから やめて下さいっっ!じゃあ、なんて呼んだらいいんですか?」


その手から逃れて、当の本人を睨むと


「“シカク”でいい 」


驚く私を尻目に、「“シカク”ほれ、言ってみろ」


なんてジッと見られて


その距離の近さに、恥ずかしくなって俯いた


面白そうに片方の口角だけあげながら


「…ほれっ」つっつくように、再度促され


しぶしぶ


「…シカク…さん…」


と小声で言った私の頭を、満足そうに撫で


「まぁ、合格だな 」とクスクス笑った


頭を撫でられるなんて、 何年振りだろう…


久しぶりな、その温もりに ゆっくり目を閉じたら


「 お …おまえ …誰にでも、そんな顔するんじゃねぇ
 スキあり過ぎだ… 」


襟元にかけてあった、手ぬぐいを


頭から、被せられた


言われてる意味が分らなかったが


そのまま足早に去って行く上忍班長の姿が、少し淋しくて


いつまでも、手ぬぐいを掛けたまま俯く事しかできなかった 



任務は、滞りなく行われていた


この一件の首謀者が分り、後は証拠を掴み拘束するだけ という段階で


途中から、増援についた中忍の勇み足で 慌てた首謀者が 


私に刃を向けた


「こうなったら、御令嬢を道連れに 死んでやる」


私の首筋に深く入り込む刃先


急所を捕えられるギリギリの所で、男の腕から逃れ


背後を取り腕を捻りあげる 


でも、そこまでで…


急いで駆け付けた、覚えのある手の温もりに抱え込まれ
 

私の意識は、闇に落ちた



おでこに触れる、優しい感覚に目を覚ました


状況が分らずに、ボーっとしている私に


「大丈夫か…?」 声がかかる


その方向に向くと


上忍班長が心配そうに眉毛を下げ、私を見降ろしていた


「…奈良上忍班長 」


眉間に皺を寄せたシカクは


「なんで…避けなかった… 」


キツク睨む


「あれが、最小限の犠牲で済む方法だと思ったので」


何を怒っているのか、皆目見当がつかない


悪びれた様子も見せない彼女に、シカクが深い溜息を吐く


「シカマルが言ってたのは… コレか…」


尚もシカクの顔を、不思議そうに見るその額を小突いた


「おまえの、特上への昇進試験は 不合格だ…」


まぁ…そんなになりたかった訳では無かったが、“不合格”と言われると


やっぱり落ち込む…


うな垂れた私の頭に、奈良上忍班長の大きな手が載る


「おまえの腕は、申し分ねぇ 
あの判断も、瞬時にしては 的確だった」


シカクの手が、頭を優しく撫でる


「だがな…おまえは、簡単に自分の命を諦め過ぎる
シカマルも、それを心配して俺に寄こしたみてぇだ」


ポンポンと2度程 頭を軽く叩かれ


「おまえには、大切なもんは…ねぇのか?」


「大切なもの?」


まるで棒読みのように、聞き返す彼女に


苦笑いで


「大事な友 とか 好いた男 とか」


“守りたい家族”とか言わない奈良上忍班長に安堵する


「そいつの為に、死ねない と思うような奴は…」


暫く考えた後


「奈良上忍班長が、私の生きる糧になって下さい」


シカクは、真摯な眼差しを向けられ 戸惑うが


「それで、おまえが 少しでも生きる事に執着するなら… その役、引き受けてやってもいい…
ただし!奈良上忍班長じゃねぇ、シカクだ!」


頭にゲンコツを落とされた



数日後


特上昇進試験が、再度行われる


私は、シカクさんの背を追って木々を蹴り林を走り抜ける




 ――ずっと、あなたの背中を追い駆けたいと思った


この、秘めた想いを抱えても たとえ、報われ無くても








end




シカク誕SS  Happy Birthday

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