10/23の日記

01:30
2.眠るきみに秘密の愛を 〜ハヤテ〜
---------------





「 ハヤテには、弱点が無い
なんでもソツが無く完璧で、私となんて… つり合わないよ… 」


同僚であるわたしの事を、飲み友達 ぐらいにしか思っていなかっただろうゆなに“好きです”と告白して返ってきた答え


その文言に、引っかかるものはあるものの 想定の範囲内だったゆなの返答に


わたしは特に気にしていなかったのですが


当のゆなが、止めるのも聞かず


ピッチを上げガンガンと飲みまくり 案の定、酔い潰れてしまった


「 …仕方がないですね 」


ため息の後、眠るゆなを背負い店を後にする


彼女のアパートは、ここから歩いて15分程


すっかり人通りの少なくなった夜道を、背中の温かさを感じながら ゆっくりと歩く


「 そんなに驚く事でしたかねぇ… わたしは、好きでも無い女性に毎回つき合う程 お人よしでは無いつもりなのですが… 」


ため息を吐き、背後のゆなに視線を向ける


今日の告白は、わたしには珍しく 思わずのもので


ずっと、この気持ちは秘めておくつもりでした


ゆなが、自然にわたしを受け入れてくれる…


それまで、待つつもりで


でも、今日の落ち込んだ彼女の 


「 私なんて、誰からも好かれてないんだよ… 」


との一言に


「 私は、好きですよ 」


そう口走ってしまった


少し前から、仕事の事で悩んでいる事は 気づいていましたが


そんならしくない弱音を吐くゆなに、思わず言ってしまった告白を


「 ハヤテは、優しいねぇ ありがと… 」


なんて、全然気づかない彼女に


「 ゆな、好きです 」


もう一度そう口にしたら


うろたえたゆなの顔と、先ほどの答え…


また、ため息が出る


思わず空を仰いだら、澄んだ空気に浮かぶ三日月


「 今日は、綺麗な月ですね 」


月に見とれ、背を反らし過ぎたのか 背中の彼女の腕がずり落ちる


慌てて背負い直すと、静かな寝息と ほんのりとゆなの匂いがした


「 まったく… 呑気なものですね 」


背にした彼女が落ちないように、慎重に歩きながら さっき言われた言葉を思い出し


わたしは、背中の眠るゆなに語りかける


「 ゆな… ゆなには、わたしがそんな風に映っていたんですね 
でも、わたしは… そんな完璧な人間ではありませんよ… 」


小さな咳払いをした後


「 恥ずかしい話なんですが… 」


少し言い淀んでから


「 わたしは、母さん子で… かなり大きくなるまで 母親と一緒に寝ていました… 」


自分で告白しておいて、顔が赤くなるのが分かる


誤魔化すように、また咳払いをして


「 あ、あとっ やっぱりかなり大きくなるまで、おねしょをして母に怒られていました 」


思わず母親の怒る顔を思い出し、苦笑いした


「 最近で言うと… データー整理してて、重要極秘データーを消してしまいました 」


あはははっ 空笑いがむなしく夜空に響く


吐かれたため息が白く、もうそんな季節なんだと実感する


「 でも…  一番どうしようも無いのは… ずっと、ずっと ゆなが好きだったのに…
この“飲み友達”というポジションに甘んじ… 待つ なんて綺麗言を言って
何も言えなかった、 わたしでしょうね… 」


とぼとぼと歩く夜道、外気はもう肌寒いのに


背の温かさが、体温同様その存在を強く意識させる 


「 まぁ、もう長い事待ったんです… 気持ちは変わりませんよ  」


彼女のアパートが見え


その階段を上がり部屋の前まで来ると


片手でなんとかバックから鍵を取りだす


何度か、今回のように酔いつぶれた彼女を送った事があり


暗闇の中での電気のスイッチも、ベットの位置も把握している


彼女を起こさないように、少しの明かりでベットに行き着き


ゆなを、ゆっくりと下ろすと 薄明かりにベットのスプリングがギシリと軋んだ


足元に丸まった毛布を掛ける、するとそれを抱えて猫のように丸くなって…


思わず笑ってしまった


その、幸せそうに眠る横顔を見つめる


弱点が無い…


わたしは、そんなに出来た人間なのでしょうか


自分では、全然そんな気はしないのですが


現にわたしは、こんなに君に弱い



眠るきみに秘密の愛を



「 好きです… ゆな これからも、ずっと… 」






end




駄文ですが、ゆな様へ捧げます

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ