01/11の日記
22:23
C 決断
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俺達は、何度も何度も話合った
でも“綱手様の条件を受け入れる”と聞かない先生と
“大切な先生の命を晒してまで、受け入れたくナイ”と言う俺の意見は平行線で
条件を受け入れない=先生と別れる
その結論が、目の前をチラチラし
「 そんな事できねぇ 」 と首を振る毎日が続いていた
1回ばぁちゃんに、別れないで済むように嘆願してみたが
ばぁちゃんも、苦渋の選択だと
俺達を別れさせない事と 子孫を遺す事は 上層部命礼の絶対な交換条件だと知る
何日も繰り返される、答えの出ない問題に
疲れ果てた頃
カカシ先生が、言った
「 なぁ、ナルト… 俺を信じてくれないか? 」
その日は、珍しく カカシ先生から誘ってきて
めったに無い状況に、すんごく嬉しい気持ちと そこに潜む不安を押し隠し
先生を抱いた後だった
「 俺は、おまえを信じてる… だからおまえにも、俺を信じて欲しい… 」
まだ、薄っすらと汗ばむ背を 背後から抱きしめる いつもなら
重いだの暑苦しいだの言うクセに、今日に限って そんな震える声で それを切り出すなんて
ずりぃよ…
俺は、腕をギュッと回し 今よりも更に近づくよう先生を引き寄せる
「 俺は… 今だって充分信じてるってぇの 」
カカシ先生は、くるっと身体を捻り 俺の方に向き直ると
「 ナルト… 最初に俺がおまえに言った事… 覚えてるか? 」
そんなの… 忘れもしない
“ いつでも、俺を捨てれるように… ”
今更それを持ち出すのか
湧き上がる怒りに、奥歯がギシギシと音をたてた
カカシ先生は、まだ俺に捨てろと言うのか
俺の事を、信用して信頼して
すぐ不安になってぐらぐらと揺れる気持ちも
普段はそんな事全然無いのに、恋愛事にはめっちゃネガテイブになるところも
全部、俺のこの愛の力で乗り越えて
もう、そんな事を言わなくて済むようになったんじゃないのか
反論しようとする俺の口を、その長い指が塞ぎ
「 今の俺は、あの頃とは違う… そうしてくれたのは、おまえだ… 」
唇にあった手は、頬に移動する
「 ナルト… 俺は死ないよ… 大丈夫だ 」
その真剣な瞳が、俺には耐えられなくて
「 そういう問題じゃ無いんだってよ… 」
困って言葉を濁すが、視線を反らす事は許されず
「 俺は、おまえの“俺が、一番大切だ”と言う言葉が嬉しかった 」
「 おうっ!ダントツだって 」
先生の、少し紅く染まる目元を擦ると
擽ったそうに首を竦める
そのまま、俺の胸元に額を押し当て
「 ナルト… おまえの事が、好きだ 」
初めて聞いた先生の俺への素直な気持ち
飛び上がりたい程嬉しい、なのに募るのは不安ばかりで
俯いていたカカシ先生が、顔を上げる
「 明日、綱手様の手術を受けるよ 」
予感は的中で
「 ダ、ダメだって!! 」
俺の否定の言葉など、もう聞き入れず
「 ナルト… 聞いて 」
先生の手が、頬を包み込む
「 もう、俺の中には おまえがズカズカ入り込んで来て… この身全部おまえで一杯だ
“いつでも捨てれるように…”その心づもりでいたはずなのに…
今更、このまま別れるなんていうのは…
情けない事に… 俺が、無理なんだよ 」
この人にしては、珍しく 泣きそうな顔で
「 俺は、おまえを好きになった事を… 後悔したくない… 」
それでも、綺麗に笑って
小声だケド、自分に言い聞かせるようにしっかりと言葉にした
俺は、カカシ先生をキツク抱きしめた
嬉しい言葉を、すんげぇたくさん貰ったのに
俺は、悔しくて情けなくて
こんなの… 昔の、まだ先生に守られてばかりのガキだった頃と何も変わっちゃいねぇ
火影になったって、大切な人の1人も守れないなんて
俺は、どんだけ無力なんだ
後、どんだけ力を付ければ 守れるようになんだ
どうして、大好きな人と ずっと一緒に居てぇ
そんな願いも叶わないんだ
俺の中は、ぐるぐると渦まくドス黒いもので一杯で
今口を開いたら…
「 『 火影を辞める 』はナシだよ、ナルト… 」
カカシ先生に見透かされ
「 おまえの夢を… 皆の希望を… 捨ててはいけない 」
窘められる
分ってる… でも、
俺は、回す腕に力を込めた
「 大好きだ 」
次の朝、起きるとカカシ先生の姿は無かった
俺は、慌てて ばぁちゃんを捜し詰め寄る
手術は無事に終わり、「 今は、絶対安静 面会謝絶だ 」そう言い渡されたにも関わらず
その制止を振り切り、病室に入ると
いくつものチュウブに繋がれた、青白い顔のカカシ先生
俺は、全身から力が抜け その場に崩れ落ちた
つづく
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