01/28の日記
04:19
そうして僕らの年は明ける 〜イケてねーズ〜
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「 奈良、来月の1・2とシフトいいか? 」
そう聞かれたのは、まだ12月の初めの頃で
閉店後デッキブラシで床掃除をしていた手を少し休め考えるが
ものの2.3秒で
「 あぁ…特に予定無いんで いいっすよ 」
そう答えた俺に
「 悲しいなぁ…正月ぐらいなんかねぇのかよ… 」
と憐れむような眼で見られて
その日が、年の初めの 世間的にはめでたい日なんだと気がついた
「 クリスマスもフルでシフト入れられてる俺に、そんな事言っちゃいます? 」
ワザとらしく溜息を吐いて見せると
「 あ〜ゴメンゴメン 」
なんて、悪びれずに謝ってから
「 でも、助かったよ。年中無休のカフェなんて実状は厳しくてなぁ 」
毎回シフト作りに頭を悩ましている姿をよく目にするだけに
あからさまにゲンナリした表情に少し同情した
「 頭数足んないなら、学校の奴らに臨時ヘルプ頼みましょうか? 」
言った途端
「 キバとナルトなら、もう断られてるぞ 」
即答で返ってきた答えに
訝しげな顔をしていると
「 あいつら、去年で懲りたみたいで 今年は、
デートの予定があるだの カフェでいちゃつくカップルを、優しく見守れる自信が無い
だとか言って断ってきたぞ 」
「 はぁ〜?! 」
スットンキョウな声と、思わず癖で鳴らした指に必要以上に力が入り、バキバキといつもより盛大な音がした
「 あぁ、いいっす!あいつら引きずって来ますんで、シフトに入れといて下さい 」
いいのか?と聞き返されたが
「 どうせあいつら、ろくな予定も無いんすよ
新年そうそう野郎ばっかでクダ巻くより、勤労に汗する方が世のタメでしょ 」
「 違いねぇ 」
クスクスと笑われて
「 それより、店長こそ 正月ぐらいは 休んだ方が良く無いっすか?
子供、生まれたばっかでしょ たまには一緒にいてやらないと、顔忘れられちまいますよ 」
「 そうなんだよなぁ… 最近俺が抱くと、泣くんだよ 」
なんて、ガックリと落ちた肩に手を置き
「 ウチも親父が出張多かったんで、ずっと親父の事を たまに来る知り合いのおじさんだと思ってましたから 」
あははっ と力無く笑い 天井を仰いだ店長
俺は、又掃除をするべく 手を動かすと
「 すまねぇな 奈良 」
背後からかけられた声に
後ろ手に手を振った
帰り道 もう吐く息が白くなっていて
もう冬なんだと実感する
今年は、暖冬だなんて言っていたが この時期でこんなに寒いって事は
「 正月はもっと、寒いんだろうな… 」
俺は、乗って来た原チャリをバイト先に置いたまま
駅までの道を歩きだした
地元の駅にたどり着くと、駅前のコンビニに寄り酒を買う
その足で、自分の家とは反対の方向に歩き出し
ポケットのケータイを取り出すと
「 あ、今からおまえん家行くから 」
それだけ伝える
駅前のアーケードを抜けて 静かな住宅街を数分歩くと
大きな公園があり、そこを突っ切った先にある ボロアパートがナルトの家だ
その鉄製の階段を、カンカンと音を立て登って行き
一番端の部屋の扉を開けると
「 おう!早かったなっ 」
見慣れた顔が2つ 狩の真っ最中だったらしく
ゲームに夢中で 声だけで迎えられる
「 やっぱ揃ってたか 」
俺は、足の踏み場も無い玄関で 靴を脱ぎながら
「 酒買ってきた、飲むか? 」
コンビニの名が入ったビニール袋を揺らした
「 飲む!! 」
こんな時だけ、2人共声を揃えやがって
ホラよっ とビールの缶を投げると
ゲームの手を休め缶の蓋を開けた
「 ちょうど喉乾いてて、なんか買いに行こうと思ってたんだぜ 」
「 ナイスタイミング 」
「 でも、どうしたのシカちゃん 気前がいいねぇ? 」
なんてキバが少し怪しんでいたが
2人共喜んでビールを飲んだ
「 おまえら、
それを飲んだら正月 俺の所の臨時バイトな 」
「 えぇーーっっ!! 」
「 問答無用!! 」
end
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