02/04の日記

17:37
50000HIT企画  U (TIGER&BUNNY〜鏑木T虎徹) 
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4.泣きそうな笑顔に、






「 いつも御苦労さまです 」


差し出された良い匂いのタオルに、思わず自分の腰に無造作に下げてあった汗臭い手ぬぐいを隠した


スグに、そんな必要は無かったと思い直すが


それでもなぜか、手にした手ぬぐいをグイグイとポケットにしまい込んで


「 …いつもすみませんね 」


そのタオルで汗を拭うと


最後の酒瓶を流し台の下に収めた


俺は、ヒーローを引退してから 兄貴の酒屋を手伝っている


ココは、お得意さんのお屋敷で 


俺は、週に1度は このバカでかい屋敷に多量の酒や調味料を配達に来ている


最初は、勝手口に無造作にケースを積み上げて置いて行くだけの配達だったが


ある日、彼女がおぼつかない手つきで その重い酒瓶やらをしまっている姿を見かけた


女性で、力が無いにしても 余りにも拙い手つきに不思議に思いながらも 手を貸した


「 大丈夫 ですか…? 俺、やりますよ 」


「 あっ、す、すみませんっ 」


彼女は、ビクリと震えてから 慌てて抱えていた瓶を置こうと手を這わす


置き場を確めるように


それは… まるで…


「 あんた… 目が見えないのか 」


いつも配達に来ていても、交わす一言二言では全く気づかなかった


言ってくれれば、最初っから手伝ったのに とも思ったが


本人から、ただの配達のオヤジに「私目が見えないんです」なんて自己申告がある訳も無い、と思い直した


そう言えば、兄貴から「あそこには、余り関わり合うなよ」と言われていた


はぁ、この事か…


それから俺は、配達の度に 彼女の手伝いをした


この屋敷は、出入りが激しく いつも大勢の人が行きかっているが


皆、彼女の事を気にする様子は無く


なぜか、ここだけ別ものみたいに静かだ


俺は、伝票を書いて彼女に渡す


「 良かったら… 」


そう言って差し出される、手作りの菓子と冷たい紅茶


もう毎回決まり事のように、声を掛けられ 最初は断っていたものの


淋しそうな彼女の顔に、「少しだけ…」と茶を共にするようになった


今日は、クッキーだな


バターのいい香りがする


「 あぁ、いつもスミマセン… 」


同じ言葉しか返せない自分が、情けなくて 苦笑いした


店の名が入った色褪せたエプロンを外し


くたびれたジーパンの埃を掃う


彼女の反対側に座ると


「 今日は、どんな話をしてくれますか? 」


まるで子供のように嬉しそうに笑う彼女


お茶ったって、こんなオヤジが 多分一回り以上も年下の女性を相手に


話す話題なんて無くて、かと言って無言で茶を頂く訳にもいかず


苦肉の策で、俺のヒーロー時代の活躍や失敗談などを 面白可笑しく話していた


他愛も無い俺の話に、彼女はよく笑い 


その瞬間は、淋しそうな顔から 本来の姿であろう年相応の女の子になる


俺は、それがちょっと嬉しくて いつも長居してしまう


もう、何ヶ月も前から そんなお決まりのティータイムを過してから店に戻っていた


「 遅いぞっ、コテツ! 」


兄貴に怒られるのもいつもの事


「 おまえ、まさか あのお屋敷のお嬢さんに手を出してナイだろうな… 」


ギクリと震えた肩に、イヤイヤ…手は出してねぇよなぁ… なんて思い直したが


兄貴は勘違いしたのか、ギロリと俺を睨むと


「 あそこには関わるなと言ってあっただろ 」


元々厳つい顔が、更に増す


「 出してナイって、出す訳無いだろっ 」


なぜか焦る自分に、ドギマギしていると


「 あのお嬢さん、当主の妾だ 」


聞き慣れない語録に固まった


「 … 妾って… だって、彼女目が… 」


そう言った俺に


「 でも、美人だろ 」


在庫整理をしながら、何気なく言い放つ兄


美人…? 確かに、目鼻立ちが整っているとは思ってはいたケド


清楚な感じで、だいたいいつもワンピースを着ているが


その裾から覗く足や袖から出てる腕は、めちゃくちゃ細くて


襟元から覗く鎖骨に、ドキリとしたりするが…


て、俺は何考えてんだっっ


思わず赤くなる頬を、誤魔化すように ゴシゴシと拳で拭った


ある日の配達帰り


俺は、彼女を見かけた


いつもと一緒で、白に小花が散ったワンピースを着て年配の男と歩いていた


端から見れば、娘ほど年の離れた彼女を遠目からでも分かる程気遣い


手を引いて、ゆっくり歩いていく


なんだかそれを見た途端、俺の中のどこかがギリギリと痛んだ


「 なんだ… 大切にされてんじゃんかよ… 」


思わず出た言葉に


じじいの妾なんて境遇に、良い扱いを受けて無いだろうと


勝手に想像していた自分が、滑稽だ


なぜか手が震えて、誤魔化すようにキツク握り締めた


それから俺は、あのお屋敷に配達に行かなくなった


兄貴は、怪訝そうな顔をしていたが


これ以上面倒をおこされるよりはいいと踏んだのか


文句も言わず配達を変わってくれた


そんなこんなで、彼女と会わなくなってから数ヶ月が過ぎた頃


ある日突然彼女が店を訪ねて来た


思わず居留守をつかった俺に変わって応対にでた兄貴に、彼女は


目の手術に渡米する事 術後も療養の為あっちで暮らす事


最後に「 コテツさんのお話で、随分救われました… 」と丁寧にお辞儀をして帰っていった


「 コテツ… コテツっ、オイ! 」


何度目かで、気づき適当な返事をすると


「 なんて顔してんだ… 」


呆れ顔で、それでもまるで子供の時のように 頭をグシャグシャと撫でられ


店の手ぬぐいを無造作に頭から掛けられた


なんて顔…?鏡に映る自分の姿を見る


そこには、泣きそうな俺の姿があって 思わず吹き出す


泣き笑いの俺に、ワンピースの後ろ姿が眩しかった







end




2作品目は、TIGER&BUNNYの鏑木虎徹です 

この作品は、最近どハマりしたアニメで


前々から、好きな声優さんがCVしてたので気になってはいたのですが


画があまり好きでは無く←失礼 見ていなかったのですが


たまたま見た時の、虎徹のオヤジっプリにハートを奪われました


今では、大好きなサンジよりも平田さんには合ってると思っています

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