02/13の日記
00:28
必要なもの 〜カカシ〜
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ナルト達の上忍師になって以来、殆どくる事の無かった暗部の任を受ける
「 おまえも、暇だろう… 」
五代目から、資料を受け取り 内容を確認する
任務は、要人暗殺
裏稼業の、一番生臭い任務だ
確かに、今のカカシにはなんの制約も無い
教え子達は、自分の適性や将来を考え他の師と進む道を決め
まるで巣立ちのように、カカシの元から旅立っていったし
断る理由など無く、2つ返事で引き受けた
過去暗部に居た頃にも、何度となく命を受けた任務でもあり
以前と同様、事無く仕事を終えた帰り道
もう日も傾き、薄暗くなりかけたなか
その血なまぐさい身体を冷たい川で洗い流す
普段なら、この程度の任で返り血を浴びる事は無いのだが
今日は、マンセルを組んでいた片方のミスも手伝い
いらぬ抵抗を受け、多量の血を浴びてしまった
冷たい水が、芯まで浸み入る
気配はスグに分った
カカシは、服を着込むと 自里に向かって歩き出す
少し歩くと、木の根元に座り込む人影が見えた
あぁ… あれか…
内心溜息を吐きながら、傍まで近づく
それは、フードを目深に被った少女で 苦しそうに肩で息をしていた
カカシは、少し迷ってから声をかける
「 どうしましたか? 」
彼女は、苦しそうに俯くと
「 持病の発作が出て… 家は、隣村なのですが… 」
森の向こうを指差した
「 送りましょう 」
カカシは、少女に背を向けると
「 乗って 」
と促した
少女は、素直にカカシの背に乗る
そして、すっかり夜も暮れ 月明かりも見えない暗闇の中
少女を背負って歩きだした
お互い何も話さないままで、沈黙が続く
年齢は、教え子だったあいつ等より少し下か…
でも、酷く華奢で 良い育ち方をしていない事がスグに分った
少女の住むであろう村の灯が近づき
後数メートルの所でカカシが問いかけた
「 殺さないの? 」
途端暴れ出す少女
少女がクナイを抜くより早く、その手を掴み地面に押し倒す
2人の間で、揺れるクナイ
「 まぁ、暴れるな… なぜ俺を殺したいの?理由によっちゃあ、やられてやらなくもナイよ… 」
大人の、ましてやトップクラスの忍びのカカシに力で敵う筈もナイ事は 百も承知だろうに
それでも、なんとかクナイをカカシに向け動かそうとする少女に
「 俺、お嬢ちゃんに恨まれる覚えナイんだケドなぁ… 」
呟いた言葉に
「 おまえは、母様のカタキだ 」
力一杯カカシを睨みつけ、言い放った
少し怯んだその手元から、少女は飛び出し
数秒遅れて立て直したカカシと向き合う
その時…
今まで雲に隠れていた月が顔を出し
フードの取れた少女の髪を照らし出す
長い銀色の髪
「 私の母様は、あなたに捨てられ 病気になり死んだ… 私は、その恨みを晴らす為に今まで生きてきた… はたけカカシ 死んで… 」
余りの予想外の内容に、固まっていたカカシだが
「 キミ、俺と戦って勝てる自信 あるの? 」
少女は首を振り
「 刺し違えても… 」
イヤ… どう見ても、刺し違える力も無いだろうに
その決意を秘めた真の瞳を見据える
暫しの沈黙の後 カカシが臨戦態勢を解いた
「 いいよ… 俺の命くれてやるよ… もう父の呪縛も 師への忠義も 大切な仲間も 気にする教え子も 全部、 何も無くなってしまったから… 」
少しずつ、少女に近づく
殺気立ち、今にも飛びかからんばかりの少女の
目の前まで歩を進めると、クナイがカカシの腕に突き刺さる
それを気にする様子も無く、彼女のその銀の髪に触れる
「 綺麗な髪だね… 」
触れられた途端、少女の身体がビクリと跳ねた
この男は、なんでこんなに優しく触れるのか
今正に、自分を殺そうとしている敵の私を…
混乱している少女を他所に
カカシは自分の腕からクナイを抜くと
「 狙うなら此処だよ… 」
自分の左胸にクナイの先を向け、握り手を少女に向けると
震える、細いその手ごと一緒に握り締める
「 いいよ 」
少女を見つめるが、人を殺す事に慣れていないのだろう 膝が震えている
「 なんで… なんで、あなたは… 母様を捨てたの… 母は“愛してる”と、何度も言ってくれた と言っていたのに… 」
カカシは、空いている手で もう一度髪を撫でる
「 残念ながら… 君の父親は、俺じゃナイ 」
驚く少女の手が、クナイから離れ地面に落ちる
カカシは、クナイを拾いながら
「 キミ歳はいくつ? 」
「 15才… 」
「 故郷は? 」
「 草… 」
矢継ぎ早の質問に、素直に答える少女に 苦笑いでクナイをその手に返す
「 俺は、キミが産まれる2年前から長期任務に出ている そこは、草隠れじゃない 」
カカシはその場に座りだし
「 しかも、情けない事に この歳まで“愛してる”なんて、言った事が無い… 」
額宛と口布を外すと少し深呼吸して
「 多分、俺には…そういう感情が、欠落しているんだ 誰かを、本気で好きになった事も無いし 愛した事も無い… 」
「 でも、 私の髪… 」
静かに首を振る
「 それは、俺にも分らない… ケド、驚いたよ 」
自分の髪を引っ張り
「 そんなにある色じゃナイからねぇ 」
苦笑いした
「 さぁ… 俺は、正直に話したつもりだケド… キミはどうする?俺の話を信用できない!と最初の望み通り殺すもよし 復讐を諦めるもよし… どうする? 」
今まで緊張していた、糸がキレたのか 彼女も地べたに座り込み
「 あなたが、嘘を言っているようには見えない… ケド… なぜ、人違いだと分っても 命を投げ出そうとするのか… 分らない 」
カカシは、少女に殺意が無い事に 少しガッカリしながらも
「 もう、俺のやる事は全て終わったんだよ… 里の為に戦うのも… もう、いいだろう… 」
腕の傷の手当てをしだした
「 かといって、潰しが効く商売じゃないしね もう、目標も… 向かう先も… 前に進む力さえも… 見失い疲れ果ててしまった 」
少女が、傍まで寄ってきて 包帯を巻くのを手伝う
「 今の俺は… 死に場所を求めている… ただ、それだけなんだと思う… 」
「 私も… ずっと、あなたをカタキと思い 復讐する事だけを、考えていたから… どうしたらいいか、分らない… 」
ポタポタと地面に落ちる雫に、慌てて目頭を拭う少女
カカシが、その頭を撫でながら
「 じゃあ、互いが互いの必要な者になろう… 俺の戦う理由に キミは、生きる理由に… それで、どう? 」
立ち上がったカカシは、手を差し出す
「 一緒においで… 俺、キミの父親… イヤ、やっぱちょっと抵抗があるんで… 兄…? そう、兄 引き受けるよ 」
少女は、瞳に雫を湛えながらも クスクスと笑って
「 よろしくお願いします 」
カカシの手を取る
互いの必要な理由の為に…
end
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