05/06の日記

12:13
狡い人 ㈠ 〜シカク〜
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その人を望んだのは、私にとって都合が良かったからなのか


この人となら…


そう女の感がした



もう5年もつき合っている男とは、マンネリで


一緒にいる意味を見い出せなくなっていた


だからと言って、別れる勇気も そこから前に進む気力も無く


惰性でお互い一緒にいるような


そんな、情けない状態だった


ケンカも絶えなく、些細な事で言い争い


互いの損得ばかりを、比較して揶揄してばかりで…


酷く、恋愛に疲れていた



そんな時、この春から部署移動になった課で あの人と会った


初めて見た時


年齢のわりに、随分色気のある人だなと思った


私をチラッと見て、横を通り過ぎると


その部署の一番奥 一際大きな机にカバンを置き


「 俺が、この企画営業二課の責任者 奈良シカクだ。今日から部署移動になったヤツも 前から居るヤツも 関係無くビシビシといくから、覚悟しろよ! 」


そんな挨拶をしたすぐ後に、近くにいた女子社員のお尻を一撫でし


その悲鳴など一切気にしない様子で


「 女には、特に手取り足とりじっくり丁寧に個人指導していくんで そのつもりでな 」


なんて、ニヤニヤ笑って


女子社員の


「 課長、セクハラですっ 」


とのツッコミに


「 いいじゃねぇえか、この世は男と女しかいねぇんだ よろしくやらねぇでどうする 」


と、あっはっはっと能天気に笑ったかと思うと


急に真面目な顔で、男子社員達に向直り


「 いいかおまえらっ! 仕事のデキル男には、もれなく“いい女”が付いてくるってぇのが世の常だ
おめぇらも頑張れよっ! 」


「 はいっ!! 」


納得できるような出来ないような文言で、男子社員にハッパをかけていて


初日から驚かされた


でも、その部署は 他のどこの課よりもまとまりがよく


仕事の達成率も高かった


それが、この 奈良課長の策略と人望だと気づくのにそう時間はかからず


私は、スグに この人に興味をもった


その企画営業二課は、1つの仕事が終わると 


必ず、そのチーム全員で打ち上げと称した飲み会をする事が決まりのようになっていた


私達は、何チームか組んで仕事をするからいいが


毎回そのすべての“飲み会”に付き合わされる課長は さぞや大変だろうと思う


その日も、二日酔いな様子の課長に 濃い目のお茶を持って行った次いでに


好奇心から聞いてみた


「 奈良課長、ここの所 飲み会続きですが… 奥様に怒られないんですか? 」


途端、溜息を吐いて


「 うちの母ちゃんこえ〜んだよ… 」


なんて、眉毛をハの字に下げ 角のように指を頭に立てて見せた


思わず笑った私に


「 でも、いい女なんだぜ 俺には、もったいないくらいのな 」


まるで、十代の少年のような笑顔ではにかんで…


私の興味は、益々強くなった



何度目かの飲み会の席


課長にお酌をしながら、頼まれていた仕事の報告をする


「 いつもわりぃなぁ… おまえ小回りきくから
ついつい頼んじまって… 」


なんて、申し訳なさそうに言ったその口で


私の名を呼ぶ


意識的なのか、下の名で呼ばれて


返事をするのに時間がかかってしまった


確かにその頃には、私の事も覚え 名を呼ばれるまでになっていたが


それは、どの女性社員にも平等になされていた 課長なりの好意で


自分が特別な存在だとは、思ってはいなかった


今のいま、下の名で呼ばれるまでは…


 ――ドキドキする


なのに、


「 おめぇ… 男とうまくいってねぇだろ 」


しれっとそんな事を言われ


予想もしなかった話の展開に、驚きながらも


「 そんな事は、ありません… 」


そう無難に答えたつもりだと思ったが


「 おまえの顔に書いてあんぞ、欲求不満だってな 」


 … … 図星を突かれた


近くにいた女子社員は、慣れてるのか


課長のセクハラ発言がまた始まった とばかりに


そそくさと、席を離れていく


何も言い返せず黙ったままの私に


課長は、チョイチョイと手招きし


近づいた私の腕を、グイと引き寄せ 耳元で


「 寝てみるか… 」


なんて言われ


酔ってるのかと思ったら


腕を掴むその手は、凄く熱くて


それが、皆から見えないようにそっと下に降りていき


テーブルの下で、密やかに私の手を握った


ギュッと力強く握られたかと思ったら


スルスルと指と指を絡め、その指が私の指をなぞる


戸惑いながらも、されるがままの私は 俯くだけで


こんな大胆こと、どんな顔でしてるのかと


課長の方を見たら


いつもと変わらない表情で、隣のテーブルに居たチームリーダーと話をしていて


なのに、絡む指は濃密で…


ゾクゾクする


まるでそこだけが、色濃い気配に包まれ 外界と遮断されているような感覚にふわふわと浮き立つ


そんな時、同僚から名前を呼ばれ ハッと現実に引き戻る


パッと離れた手に、少しの名残惜しさを感じながらも


呼ばれた先に移動すると


それからもう、飲み会が終わるまで 課長の傍には戻れなかった



それから暫く、何事も無かったように日々は過ぎていき


課長も、ナニくわぬ顔で


あの日の事なんて、無かった事のようになっていて


嫌がおうでも、からかわれたんだ… 忘れよう…


そう思い始めていた







つづく






裏部屋なのに、エロくなくて すみませんm(__)m 


勢い余り、長くなってしまいました((汗


もう少し、つづきます…

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