09/09の日記
19:41
甘い蜜 〜spin-off〜
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― 企画参加SS ―
甘い蜜
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「 シカマル… 」
もうすっかり俺の耳に馴染んだはずの その声
俺とあの人がつき合い出して、季節は二つ三つ過ぎたというのに
未だ、信じられなでいる
この人が、俺の名を呼ぶこと
俺の傍にいる事
俺を好きだと言う事
全部が信じられなくて
時々、ホントに 夢なんじゃないか… と思う時がある
長く幸せな夢を、いつまでも見続けているような
幸せなのに…
時々、 酷く悲しくなる
それは、カカシさんも同じようで
いつも、アホみたいに俺を見て デレデレしてるクセに
無意識なんだろうが、時折泣きそうな眼差しになり
その後は、決まって 俺をベタベタに甘やかしたりする
イヤ、正確には カカシさんが甘えてるんだと
最近気づいた…
今も、名前を呼ばれ
人気のない木陰で 「 おいで 」と
まるで、自分のところの忍犬でも呼ぶように腕を広げられて
俺は、急速に赤くなる頬を ゴシゴシと擦りながら
「 なっ、ナニ言ってんだよっ! 」
怒鳴るのが精一杯で
そのまま近づいてくるカカシさんの胸板を、押しのけようとしたが
あっさりと捕まり
それでも、ジタバタと暴れる俺を包み込み
ヨシヨシなんて風に、ポンポンとしだす
めんどくせぇ事が嫌いな俺が
スグ諦めるとタカを括って、回される腕が深くなる
「 はぁっ… 」
溜息と共に、カカシさんの思惑通り諦めた俺をよそに
「 生きかえるなぁ… 」
なんて、だらしなく 目尻を下げる
そんな顔を見せられたら、おとなしくするしか無いじゃねぇか…
カカシさんの肩口に、自分の額を擦りつけ
その密かに漂う血の匂いには気づかないフリをして俯いた
明日をも知れないこんな稼業だ
舞込んだAランク任務で、明日死ぬかもしれない
困難な潜入任務で、カカシさんが帰ってこないかもしれない
そんな事は、お互いに良く心得ている
今日見た姿が、明日も見れるなんて確証は… どこにもないんだ
… 分っている
でも、
それでも、もう二度と 大切な人は、失いたくねぇんだ
もう、あんな思いは… 二度とごめんだ
でも、そんな考えは 忍びとして許されない
そう思っていたが
ある夜
俺は、息苦しさに目を覚ました
寝ぼけていて、それがカカシさんの所為で
ガタガタと震える腕で、俺を力一杯抱きしめている為だと気づいたのは暫くしてからで
「 カカシ さ…ん…? 」
俺の声に、ハッと我に返ったように 腕を緩めたが
それでも、少しすると
「 ごめん… ごめん、少しこのままで… 」
また、ギュッと抱きしめられて…
―― 暗くて深いカカシさんの闇
それは、時々目にする俺の関われない部分
幼少の頃から、ずっと戦ってきたんだ
その闇が色濃い事も、少しづつ毒を流しこまれるように カカシさんを蝕んでいる事も
なんとなく感じていた
俺と逢うまで、この人はどうしていたのだろう
眠れない幾つもの夜を…
酷くうなされて起きるような不安な夜を…
1人ぼっちで、どうやり過ごしてきたんだろ…
月明かりも無い暗闇の中、今のカカシさんの表情は窺い知れない
泣いているのか 淋しいのか 苦しいのか
それとも… 怖いのか
多分、 全部なのかもしれない…
俺は、カカシさんの背を撫でる
いつもカカシさんがしてくれるように
ポンポンとそっと背中をたたいて
暫くそうしていると
「 俺ね… 」
ゆっくりと話しだすカカシさん
「 昔… 凄い大切な人がいたんだ… もう、その人の為なら 命も厭わなかったし… あの頃の俺には、その人が全てで… それ以外は、何も目に入らなかった… 」
やんわりと俺を離すと、緩慢な動作で起き上がり
シーツの上に胡坐を掻いた
「 思えば… あれが俺の、初恋だったんだと思う… 」
カカシさんと同じように起き上がろうとした俺の動きが止まる
それにクスッと笑って まぁまぁ とでも言うように
俺の頭を、自分の膝まで誘導し
結わわれていない髪を弄ぶ
「 でも、その人は… 俺を措いて、逝ってしまった… 」
俺の中での色々なことが、話と重なって
「 そっからの俺がどうなったか… おまえなら、分るだろう… 」
息苦しくなった
上手く呼吸ができなくて、やっと口にできたのが
「 …なんで、こんな話… 俺に、するんですか… 」
声が震えちまうのが気になって
口元に手を当てると
その手をそっと退かして、口づけられた
それは、安心させるような 触れるだけのキスで
「 俺ね、最初… おまえと俺の境遇が似てるから 気になるだけなんだと思ってた 」
優しい手が俺の頭を撫でる
「 正直、強引にコトを成した後も 自分の気持ちに確証が持てなくて… 」
ガバッと起き上がろうとした俺を阻止し
「 でも、最近困った事に… 確証だらけで… 俺は、バカみたいに おまえが好きなんだと、思い知るよ… 」
話の意味が分らなくて、カカシさんの言った言葉を反芻する
「 なっ、 」
瞬時に赤くなる顔を腕で隠した
「 今も、大切な人が逝ってしまう夢を見て… 守れない自分の弱さが悔しくて… 一緒に逝かせてくれない哀しみや 失う事の絶望感… そんなのが、いっぺんにフラッシュバックしてきて、気がついたら 飛び起きてガタガタと震えていた… 」
カカシさんは、俺の腕をゆっくりと解き 頬を撫でる
「 でも、そんな時 おまえの温もりを感じて… シカマルじゃ無くてよかった… そう思った… 火の意志に、反するかもしれないが… 俺は多分… もう、おまえを手放してやれないんだ… 」
それは、忍びとして長い間里を支えていた この人らしからぬ言葉で
驚いたと同時に、恥ずかしさが込み上げた
「 プロポーズかよ… 」
思わずボソリと呟いた自分の言葉にも恥ずかしくなり
踵を返すように、元の場所に戻り布団を被った
コノ気持ちを言葉にできるなら
俺の中の不安も カカシさんの愁いも
全部浄化できるのかもしれない
日頃“めんどくせぇ”が常套句の俺のボキャブラリーでは、そんなのは無理で
ただ、布団の隙間から見えたカカシさんの手をギュッと握り締める事しかできなくて
そんな俺をクスクスと笑って
「 シカマル… 俺、おまえのこと 凄い好きだ… 」
この人は、臆面も無く 何言ってんだ
布団の中で、ブツブツと文句を言いながら
「 …知ってます 」
そう答えてやったら
「 おまえに、凄い癒されてるよ… 」
再度、重ねてくる
だ・か・らっ
「 知ってますってっ 」
ガバッと起き上がろうとした俺に
「 …もう、アスマにも 帰してやれないから… 」
低い声で、真っ直ぐ見つめられて
俺もそれに応えるように
「 俺も… 四代目には、帰してやれませんから 」
カカシさんは、驚いたような顔をしていたケド
スグに腕が伸びてきて、再度抱きしめられる
「 もう… ホントに、おまえって子は… 」
カカシさんは、困ったようなテレたような微妙な表情で笑った
俺は、カカシさんの首に腕を回す
より密着した体勢のまま、カカシさんの耳元で呟く
「 俺、カカシさんが思ってるより… すげぇ… あんたの事が、好きだ… 」
俺の精一杯の言葉を、あんたに贈る
end
スピンオフ的なSSです
砂吐く程の甘い愛を…
シカマルHappy birth day
参加させて頂いて、ありがとうございましたm(__)m
☆コメント☆
[ラッチ] 09-10 20:34 削除
わ。更新しとる
マジたまんねぇっす
切なさに満たされます
[ゆな] 09-13 20:12 削除
yukiさーん!
カカシカいいわぁ (*>∀<*艸)
最愛の人をなくした二人がひかれあうって....んぁー!萌えまするーーー!
[マル] 09-14 12:01 削除
あぁ、カカシカ好きすぎてたまらないです。
やっぱカカシカいいわ・・・。
せつなくて、甘くてステキです・・
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