11/23の日記

03:43
役わり 〜spin-offU〜
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役わり
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「 ゲンマ〜 おまえん所、中忍が上がってくるんだってな 」


さっき、そんな事を アオバに呼び止められ言われた


へぇ〜 なんて返事をする間も無く


アンコが、俺を呼びに来て


呼び出された、先で さっき聞いた内容と同じコトをもう一度聞く


「 じゃ、よろしく頼んだぞ 」


その言葉と共に差し出された書類を受け取ると


一礼し部屋を後にする


待機室に向かう道すがら、その渡された資料に目を通した


中には、見知った顔写真の付いた忍識表


直接に絡んだ事こそ無いが、噂は耳にしている


「 奈良、シカマル…ねぇ 」



―― 相手を知るには、一緒に任務をこなすのが一番だろう 


もっともらしい言葉で、めんどうな任務押しつけやがって


今頃、シメシメとほくそ笑んでるだろう 里の長を思うと


溜息しかでねぇ…



次の日 


集合場所にいたアイツを、最初に見た時


なんだ、案外普通じゃんか と思った


古くから続く由緒ある家系 次期参謀の噂もあるキレ者


そんな前評判から、どんなヤツかと思っていたが


背中を丸め、頬をポリポリと掻きながら


「 不知火さんですよね… 奈良です 
よろしくお願いします 」


と頭をちょこんと下げた姿が


今時の若僧らしくて笑った


俺は、奈良の頭を力任せにゴシゴシと撫でると


聞こえる不満の声を無視し


「 イクぞっ! 」


里を後にした


任務は、潜入で 相手の尻尾を掴めばいいダケのものだが


この相手がなかなか曲者で 暗部を導入しても確証が掴めない という


めんどくさい任務だ


暗部でどうにもならなかったのが、俺達でなんとかなるとも思えんが…


宿泊先の旅館に着き 作戦を確認する


暫くここを起点に動く事になる、が…


なんで、相部屋なんだ!


相手を知るには… と妙に強調していた姿と


浮いた金で、高い酒を煽りご満悦だろう姿が 目に浮かんで


湧き上がる怒りを押し殺すように、目頭を押さえた 


まったく…



それからの任務は、特に可も無く不可も無くという感じで過ぎていき


幾つめかの晩


夜中ふと目覚めると、放たれた窓から風が通り抜ける 


横に寝ているハズのそいつは、窓枠に腰掛け


月でも眺めているのか夜空を見上げていた


声をかけようとして…  やめた


それは、アイツの手にギュッと握られていた銀色の品だったり


その頬を伝う雫だったり


そんなものに、なんて声をかけたらいいか


俺には、分らなかったかった…


互いに忍びだ、俺が起きた事に気づいたのだろう


バツが悪そうに、ゴシゴシと頬を擦った姿を


俺は、見ないフリをして窓に背を向けた


優しい言葉も、慰めも なにもかも、今のアイツには違う気がした


アイツも、そんな事は望んで無いだろう…


思う… こんな事は、よくあった


今までも、たくさん目にしてきたし


自身でも、経験してきた事だ


なのに、


そんな時… 俺は、なんて言葉をかけていたのか…


どんな態度をとっていたのか…


思いだせ無くて


鳩尾辺りが、キリキリと痛んだ


こんな苦々しい思いをするのは…  久しぶりだ



その後も、日々は過ぎたが


あの日の夜のような事は、二度と無かった


それが、返って 俺を不安にさせた


事態が動いたのは、奈良の気転だった


奈良は、ハナから当事者には目もくれず


回りから情報を取り、確証を掴んでいった


それも、その家の子息や丁稚の子供達をつかってだ


「 ガキは、ガキ同士ってねっ 」


なんて笑った笑顔が、幼く見えて


思わず、子供にするみたいに ヨシヨシと頭を撫でた


「 おまえ、ホント頭いいんだな 」


俺の呟きに


「 めんどくせぇから、早く終わらせたかったダケですよ 」


薄く笑って


「 こんな頭、イザという時 役立たなきゃ意味が無い… 」


小声でボソリと囁いた



めんどくせぇ


その口を吐く言葉とは、正反対な生真面目さ


柔軟性もあるにはあるが、イマイチ割り切れていない固さ


コイツが、先々で 辛い思いをするだろう事は


容易に想像ができた


今後の課題は、そこ だな…


後は、コイツの時折見せる刹那的な生き方に


歯止めを かける


それは、残された俺達の役目だろう


眉間に皺を寄せながらも、薄っすらと頬を紅く染める奈良の頭を


俺は、いつまでも撫でつづけた







end






カカシカ長編 の spin-off第2段 です

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