04/09の日記

23:30
D 育む 
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俺が、ベットの側らで先生の手を握り締め続けて 数日が経った


ずっと傍に付いていたかったが、カカシ先生の入院は 極秘事項で


俺は、いつもと変わりない生活をする事を強いられた


それでも、仕事が終わった深夜から明け方までの時間は 毎日 カカシ先生の傍で過した


今日も、病室のドアをゆっくりと開ける


そこには、昨日とナニも変わらない風景が広がっていて


室内は、静まりかえり 時折無意識に吐く自分の溜息が恐ろしく大きく聞こえ苦笑いする


なのに、カカシ先生は息してるのか心配になるほど静かで


その鼓動が動いている証の機械音が、規則正しく鳴っている事で安堵するような日々だった


「 先生… まだ起きねぇのかよ… 」


ばぁちゃんは、手術は成功した と言った


ただ、初めての事で 症例も無い


成功は、論理的なもので 


後は、カカシ先生の身体との適合率や 拒否反応の有無 


何がどうなるか、ばぁちゃんにも分らないと言っていた


「 目ぇ開けてくれよ… 」


ギュッと握り締めた手に頬を寄せると


少しだけ、ピクリと動いた


俺は、驚いて 


「 カカシ先生…? 」


名前を呼ぶと


今まで閉じていた瞼がゆっくりと開き


「 ナルト… 」 


俺の名を、呼んだんだ


もう俺は、先生の名を叫びまくって 騒ぎを聞きつけた医療忍の制止も聞かず


カカシ先生を抱き起こしたもんだから


サクラちゃんに怒鳴られ


ばぁちゃんにゲンコツをくらうハメになった


「 とりあえず、着床はした 第一段階は成功といっていいだろう 」


喜び小躍りする俺に、またもやゲンコツが落ちる


「 おまえは、いつんなったら人の話を落ち着いて聞けるようになるんだっ 」


そっから、正座で 三時間の説教


おかしく無いか? 


俺、火影だぜ… 一番偉いんじゃないの?


兎にも角にも、カカシ先生は 危険な状態からは脱した


だが、お腹の子は まだまだ危うい状態で


三ヶ月までは、絶対安静 大事を取り入院生活は継続との事だった


不満そうな俺を、カカシ先生が宥める


久方振りだ、こんな風に頭を撫でられるのは


俺は、まだそんな兆候も微塵も無いカカシ先生のお腹に耳をあてる


不思議だ… ここに、俺達の子が


俺もカカシ先生も、家庭の温もりってやつに縁遠い


だからこそ、一人 孤独に耐えていた幼い時の俺の分も


大切な者を、失う辛さを抱えていた幼い先生の分も


「 …大切に、育てていこう 」


俺が言うよりも早く


そう言って笑ったカカシ先生の顔は、


なんだか… 母の顔に見えた



でも、そっからが大変で


妊娠の初期症状から


食欲が全く無く、食べ物なんてナニも口にしてないのに吐き続け


見る見るやせ細るカカシ先生を目の当たりにするのは


とてもシンドかった


目を覚ます前よりも青白い顔で、点滴に繋がれる先生に


おろおろするばかりで、俺にできる事と言ったら


やつれたその背を、ただ擦る事しかできなくて


こういう時、男はホントに無力だと痛感していた


「 …火影が、情けない顔するな… 大丈夫だから… 」


そんな弱弱しい声で言われ、もうホント


代われるものなら、代わりたい


「 大丈夫だ… 」


もう一度静かに繰り返すと、疲れ果てたように寝むってしまった


コケた頬 筋力の削げ落ちた手足 


もうこの人は、忍びに戻る事は 無理なのでは… 


それを、安堵する俺と 悔しく思う俺が居て


どう、カカシ先生に声をかけたらいいか


分らなかった


先生は、どう思ってるんだろう…


俺なんかよりも、何倍も頭がキレるこの人の事だ


今の状況は、想定してた事なんだろう


考えた時、どう思っただろうか


やっぱ、もう戦わなくて済む事に 人を殺め無くて良い生き方に 安堵しただろう


でも、先生は 生まれきっての忍びの血筋だ 


自分の事よりも、この里を思い 仲間の事を思う人


そんな先生が、戦わずにいられるのか


答えは、否だ


先生は、例え 片手片足が無くても 戦う人


戦闘に無意識に動く身体 叩き込まれた火の意志 


それは、色濃くカカシ先生の内にあるもの


もし、今の俺が無く クラマとの力の駆け引きに負け 里に害成す九尾となり果てていたら


カカシ先生は、間違いなく俺を殺すだろう


それが、今のように 色恋を含む仲だったとしても


それは、変わらない


それほど、カカシ先生の内では 里や仲間の為に戦う事は絶対なのだ


たまに、隠居してのんびり余生を送りたい なんて口にするケド


そんな事、できる人じゃ無い事を知っている


そんなの… できる人じゃ… 


なのに、それでも今のこの状況を受け入れる決断をした先生に


今更ながら、カカシ先生の“覚悟”を思い知った



それから、先生が病院を出れたのは ばぁちゃんの言い渡した3か月を 更に超えた


5ヶ月後だった






end

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