12/15の日記

02:22
過去  ※閲覧注意
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少々乱暴な表現があります  閲覧注意で













その話を聞いた時


あぁ… それでか…


なんとなくだが、すぐに納得した


その男の顔には、見覚えがあったからだ


普段のカカシさんは、俺と居る時とは真逆で


滅多に、感情を露にする事も無いし


よっぽど気ごころ知れた者でない限り


頷いたり 短い返事をするだけで 会話らしい会話もしたがらない


そして何よりも、触れられる事を 酷く嫌がる


それは、他の忍びにも 周知の事実だが


稀に、知らずに馴れ馴れしく触れてくる女に 雷切りを放とうとして


慌てて仲間内に取り押さえられた事がある とアスマが 笑い話のように話してくれた事があった


そんなあの人が、あの日 


歳の往った上忍に絡まれていた


それは、傍から見ても性質が悪く 


歳の頃は、親父たちよりも上か その厳つい風貌に似合いな 大きな頬の傷を引き攣らせながら


ニヤニヤとあの人の首を、強引に自分に引き寄せ


まるで、舐めるような視線で見下ろし


その近すぎる距離で、何かをカカシさんの耳元で囁いている


その様子から、ろくでも無い事だとは 推測されたが


俺は、舌打ちするアスマに まるで見るなとでも言うように


「 向うに行ってろ 」と追い払われた


当時まだガキの俺にも分かった どす黒い何かに


上に上がると、あんなめんどくせぇのに巻き込まれるのか と思ったら


つくづく、俺はここらで丁度いい と思った




「 カカシの初めては、俺だよ 」


 … 頬の傷  


まだ生きてやがったのか


これ程、人の生を呪った事は無い


あの人の大事な人達は、皆 逝ってしまったのに


なんで、コイツだけのうのうと此処に居るんだ


あの時の、カカシさんにしたように


馴れ馴れしく傍に寄ってくるなり


絵に描いたような、下衆な笑みを浮かべ 俺にそう囁いた


不自然に近い距離間を、修正しつつ 黙って歩みを早めるが


相手は、めげずに更にすり寄ってくる


密着させてくる身体に、むしずがはしるが


「 最初は、全然入らなくてな 
でも、3人がかりでまわしてやって 
やっと全部入った時には、血がいい潤滑油になってなぁ 」



相手は、お構いなく 話をしながら更に密着してきて


アンダーの上から当たる、男の生腕が気色悪く 鳥肌が立った


「 初めこそ暴れたが、スグにおとなしくなったと思ったら 舌噛もうとしやがって 裏切り者と言えど白い牙″の子供
死なれちゃ困るんで 慌てて、額当て突っ込んでな 」


胸がムカムカする 


…気持ち悪い


「 アイツ俺たちよりも、一回り以上も下で小隊の長とかやってたから 同じ隊になるたびに 犯してやったよ 」


俺の鼻先で、指で輪っかを作り 中指を抜き差しする動きをする


気持ちが悪い…


背筋を、嫌な汗が流れていく


「 親も居なくて、1人だったから 誰にも言えなかったようで こっちには好都合だった
カカシが暗部にいくまで、ずっとヤリまくってやった
感謝しろよ、今のアイツが床上手なのは 俺のお蔭だからな 」



気持ち悪い


もう黙れ!


吐きそうだ


ガクガクと怒りに震える拳が、今にも奴に殴りかかりそうで


そんなのは、コイツの安っすい挑発にのるだけで 下衆の思う壺だと


分かっているのに


もう、その口から吐き出される 醜悪なものを聞きたくねぇ


その為なら、今すぐに印を刻み そのぶっとい首を締め上げ


今後、一言も口をきけないように…



「 何してるの、シカマル… 」


その声に、振り返る前に


印を結ぼうとしていた手が、そっと下された


「 噂をすれば、カカシじゃねぇか 」


馴れ馴れしく肩を抱き寄せようとしたその腕を払いのけるカカシさん


「 先輩、五代目様が呼んでましたよ
今度は長期任務ですってねぇ… あそこは、凶悪な輩が多くて 暗部でも手をやいてたみたいですから 
…無事に帰れるといいですね 」


なんの表情も写さないカカシさんの片目を


男は、舌打ちし睨みつけると


「 どけっ! 」


俺を押しのけ、苦々しい顔で去っていく


その姿が見えなくなった途端、堪えていた吐き気が限界で 胸元をひっ掴み蹲った


「 大丈夫、シカマル… 」


カカシさんの手が、ゆっくりと背を擦る


この人の過去に、何があったかなんて詮索する事でもない


ただ、辛く厳しかっただろう事は 洩れ伝わっていた


あの時代なら、そんな事も 容易に想像できる


カカシさんの世代は、生存率が極端に低い


それは、生まれた時から戦争の時代で


年齢に関係なく、戦地に駆り出される事が当たり前だった事もあるが


あの九尾襲来以降より、温存されたカカシさん達の世代が


その後の戦線をすべて戦い通す事になったからだ


そんな酷い状況な上に、更に…


神なんて存在、信じた事はねぇが


居るなら恨み倒したい


あんたは、どんだけあの人を苦しませるんだ


どんだけ傷を重ねれば、あの人を解放するんだ


あんたのその仕打ちは、鋭利な刃物ように鋭くは無く


致命傷を与えないように、ジワジワと肉を裂き骨を削っていく


そんな仕打ちを、神と呼ばれる輩がする訳がない


こんな、 酷い仕打ち…


俺は、また気づかされる


俺の知っているカカシさんは、ほんの一握りで


分かったような気がしていたのは


単なる俺の傲慢と奢りだった事を


「 分かっていたハズ、だったんだ… 分かって いた … はず 」


自分の呟きが、虚しく響く


握りしめた拳が震えるのを、抑えるように ギュッと力を込めた


カカシさんは、何も言わず 俺の背を擦り続けてくれていたが


少しの静寂の後、意を決したように


「 … ごめんね 」


絞り出すように口にした


その言葉に、俺は顔を上げ カカシさんを見上げる


なんで、あんたが謝るんだ


あんたが謝る事じゃ無い


あんたは、悪く無いんだ


なのに…


なんだか猛烈に、悔しさや悲しさが込み上げる


泣くなんて、論外だと頭では分かっているのに


俺は、溢れ出る涙を止められなかった


なんで、俺は カカシさんより年下なんだ…


なんで、あの時代に カカシさんの傍に居れなかったんだ


どうして、守ってやれなかったんだ


物理的に無理だと分かっている 


無茶な言い分だとも


でも、そんな考えてもどうにもならない事が グルグルと駆け巡り


カカシさんの顔を、まともに見れなくなって俯いた


「 …シカマル 俺の過去を、おまえが 哀しむ事は無い ましてや… 苦しむ事も… ね 」


優しいカカシさんの声


「 ごめん… 分かってる… 」


泣く事も 悔む事も お門違いな事は分かっている


俺は、俺の中の整理のつかない気持ちを振り切りように立ち上がると


グイッと、袖口で頬を拭った


今、俺はカカシさんの傍に居る


つられて立ち上がったカカシさんの頭を引き寄せると


自分の肩口に押し付ける


「 さあ、カカシさんの番だ 泣いていいぜ 」


俺の出来る事をしようと、至極真面目に言ったのに


カカシさんは、少し驚いたように絶句した後 


クスクスと笑って


肩口から顔を上げ 俺を見据えると


「 … 俺は、幸せ者だな 」


そう言って、ホント嬉しそうに笑った







end

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