07/03の日記
00:53
守る
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俺の声に我に返ったように少しづつ殺気を引くカカシさん
その瞳がゆっくりと、俺を映しだし写輪眼が閉じられる
刃先の俺を認識すると ほんの微かにハッとしたような表情と
その唇が俺の名を紡いだような気がしたが
それは俺の都合のよい錯覚だったようで
すぐに先ほどの敵忍と大差ない眼差しでギロリと睨まれ舌打ちした後
「 … 何しに来たの 」
冷淡に言い放ち踵を返した
俺の答えは聞く気は無いらしく、そのままふらふらと歩き出す
危うい足取りに手を貸そうとする俺の手を振り払い 倒れ込む仲間の元へ歩いて行く
医療忍も到着し、カカシさんに急ぎ手当を進めるが自分より他を優先するように伝え
おぼつかない足取りで森林に消えていった
俺は、躊躇う事無く後を追う
カカシさんに罵られようと どんな仕打ちを受けようと
なんでもいい! あの人を死なせたく無い!
森を少し入った所 大きな木の根元に倒れるように座り込み
木に背を預け、目閉じるカカシさんの傍に寄る
青いを通り越し一切の色素が抜けてしまったかのような真っ白い顔
息をしているのかと心配になる程 ピクリとも動かなくて
声をかけようとした俺に向け、瞬時にクナイを取り出し
「 触るな 帰れ 」
冷ややかに言い放つ
一瞬たじろぐが、それでも構わず距離を詰め手当をしようとする俺に苛立つようにクナイの先で顎を掬うと
「 おまえ、殺されたいの 」
鋭い視線
俺の中にはもう迷いは無い
その刃先や刺さるような視線も気にせず手当の為に忍服を剥いでいく
「 聞いてんの 」
更に低くなる声
「 … いいっすよ 」
止血する手を休める事無く呟いた俺の言葉が理解できないようで
「 おまえ、何言ってんの 」
怒りを露わに聞き返される
「 あんたの手に斯かるなら本望だ、と言ってるんすよ 」
小声だがしっかりとした言葉に、カカシさんの腕が力無く下ろされた
何が一番大切なのかその答えはもうでている
俺の一番は、温もりを与えてくれたあの時から ずっとカカシさんなのだから
黙々と手当を続ける俺に、もう抵抗する力も気力も残っていないようでされるがまま俺が触れる事を受け入れてくれ
「 … バカだな せっかく… 」
カカシさんが何か言いかけたが それっきりで
沈黙が続く辺りは静寂が漂い、先程の戦闘が嘘のように静まりかえる
俺は止血を終えた傷口に包帯を巻いていく
裂傷の範囲が広く 包帯が足りない
躊躇無く着ていた忍服の袖を引き裂きその布を巻く俺の視線が一点で留まる
そっぽを向いていたカカシさんが、突然動きを止めた俺に気づき その視線の先を追う
途端、バツが悪そうに天を仰いだ
俺の視線の先には、手首に巻かれた 藍色の髪留め
これは… 少し色違いの糸で丁寧に補修されていて
あの時遊郭で引き千切られたものだ
「 捨てたんだと… 」
驚く俺を遮り
「 もういいだろう 」
立ち上がろうとするカカシさんを押し留め残りの処置をする
こんな形でしか思い知れないなんて酷く滑稽だが
俺は、ハッキリと自分の内から湧く“想い”を感じていた
アスマが殉職した後 屍のようにただ生きていた俺に 苦しく無く息をできる場所 足を取られずしっかりと立てる場所に引き上げてくれたのはカカシさんで
今まで、ずっと俺はカカシさんに守られていた
それを返したいとかそんな大それた事では無く
ただ俺のぬくもりも、カカシさん あんたに分けてやりてぇ
俺は、カカシさんを助けたい
それは今であって 過去からでもあって これからこの人が背負うだろうものも全部 全てで
俺よりも全然強いカカシさんにおこがましが
“ この人を守りたい ” 強くそう思った
つづく
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