03/21の日記

01:34
決意 〜九尾封印前SS〜 
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「…行くのか?」


ほのかに蝋燭の灯が洩れる、薄暗い室内


俺の目の前で、その独特の忍具を揃えている端正な横顔をジロリと睨む


「やっぱ…暫く実戦から離れてると 忍具が痛むね〜」


研いだ刃先を明りに翳しながら仕上がり具合を確める


「あたりめぇじゃねぇか、どこの世の中に 王将自ら戦地に向かうアホが居るんだよ…」


俺の言葉に、あははっ なんて笑ってから


急にらしくない真剣な表情で


「シカク… 王将の回りに 駒はいらないよ
先兵の歩も 要の飛車角も 参謀の桂馬もね…」


「…おまえが将棋に詳しいなんて…初耳だな…」


驚く俺に


「自来也様に少しね」


微笑んだ顔に 世の女共がキャーキャー言う理由が頷ける


顔もいい 忍びとしての腕も超一流 四代目火影という最上級の地位もある


男だったら、誰もが羨ましがるものを 全部持っているコイツ


その為、ガキの頃から 仲間からヤッかまれ 大人からウトまれてたきた


ずっと傍(かたわら)で見ていた俺に言わせりゃあ


神童だの天才だの言われても 本人の何万倍もの努力を無しにしては、成りえない


なのに、やれて当り前な風潮に 


俺は、心底 平凡で良かった と思っていた程だ


アカデミーの頃は、よく一緒に組んだ


「一緒に里を守ろう」それがアイツの口癖だった 


守るものは、形を変えたかもしれないが


それは、今でも変わっていないんだろう


「他に方法は、ねぇのか…」


言いながらも、コイツの出した答えに 他が有る訳が無い事も分っているのに


それでも、コイツは里に必要だ 行かせる訳にはいかナイ


クナイを研ぐその背に話す


「おまえが行くな… 俺達でなんとかする…」


暫くの沈黙 静まりかえった室内に
磨ぎ石と刃先が擦れる音だけが響く


「シカク… 後を頼んだよ…」


「おめぇ俺の話を聞いてんのか!」


声を荒げる俺に、ガキん頃みたいに悪戯っぽく笑うと


「…シカクにしか、頼めないんだ…」


身支度を整え マントを翻す


俺の、喉まで出かけた“俺も行く”と言う言葉を察したように


その影の名を背負うにふさわしいオーラで


「後を、頼んだ…」


そう言うと、ここの窓からでもありありと分る


その紅く焼けつくようなその地へと 行ってしまった


蝋燭の火が揺れる


それを見つめながら


「力の差は、歴然だけどよ… 昔みたいに “一緒に”とは… 言ってくれねぇんだな… 」


俺は、力なく拳を握り締める事しか できなかった






end




このSSは、ミナトとシカクが 同じアカデミーの同級だったらいいなぁ と言う設定と


ミナトが、九尾との戦いに挑む前に こんなやり取りがあったらいいなぁ… と言う自分の妄想です


実際は、この間 アニナルでやってしまった通り こんな時間は無かった訳ですが…(^^ゞ

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