01/10の日記

21:47
B 条件 
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今俺達は、前火影 綱手のばぁちゃんの前に立たされている


ばぁちゃんは、なぜか火影のイスにドッカリと座り 俺達に睨みを効かせ


「 で?おまえ達の… 弁解を聞こう 」


そのデカイ胸の前で、腕組みをした


弁解とは、先日の俺の花嫁候補を選ぶ場で カカシ先生の腕を取って愛の逃避行をした事であって


「 別に、弁解なんかねぇケド… だって俺は、カカシ先生が大す、イッテェーッッ 


全部言い終わらないウチに、カカシ先生に思いっきり足を踏まれる


踏んだ当の先生は、そ知らぬ顔で


「 で、カカシはどうなんだい? 」


ばぁちゃんの視線を受け、先生は溜息を吐きながら


「 こうなったのは、俺の所為です 」


いつも猫背なその背を、更に丸くて 


らしく無い、弱弱しい声に


「 先生… 」


顔を覗き込もうとしたが


「 …申し訳ありません 」


と深ぶかと頭を下げてしまい、その表情は 窺いしれなかった


俺は、そんなカカシ先生の様子に 嫌な予感しかしなくて


この後先生が何を言うのか、安易に想像がついて いたたまれなくてうな垂れた


「 でも… 互いの気持ちは、同じです… 」


予想した事と違う言葉が、耳に入り


思わず、勢いよく先生を見上げた


てっきり、別れるとかそう言う話になんだと思っていたのに


カカシ先生の口から、そんな…嬉しい言葉


俺、泣きそう…


「 カカシも、了承の上… と言う事だな? 」


ゆっくり頷く先生に、思わず抱きついた


嫌そうな顔の割には、ほんのりと赤い耳が可愛くて


押し倒したくなるのを、グッと堪える


先生は、いつまでも抱きついてる俺を引きはがし


「 処遇は、綱手様に一任します 」


静かにそう言った


処遇…?


「 ばっちゃん!!カカシ先生は悪くねぇ!!罰するなら、俺だけにっ、ガッハッ


慌てて詰め寄る俺に、今だ健在なその怪力でゲンコツを落とすと


「 モロ手で賛成… と言う訳にはいかない おまえ達程の力のある血筋が絶えるのは、里の存亡にも関わる問題だしな 」


やっぱ、そこ突いてくるか…


叩かれた頭を擦りながら、先生の顔をチラッと見ると


カカシ先生も、神妙な顔つきだった


「 で、ものは相談なんだが… 子を作れ 」


ポカンとする俺に


「 禁じてだが、私の医療忍術でそれが可能だ 」


喜ぶ俺に


「 ただし、おまえ達の血を濃くする為 掛合せで人工的に胎児を作るのでは無く 受精から着床 出産までしてもらう… それでもいいか? 」


俺には、よく分らない内容で


ばぁちゃんに、詳しく問いただそうと身を乗り出した所を


カカシ先生が制する


「 分りました… 」


「 いいんだな、カカシ… 」


ゆっくり頷く先生


「 生死の危険も伴うぞ… 」


再度頷く


生死?生死って…誰が…?…先生が? …そんな、そんなん駄目だっ!そんなリスク、先生に負わせられっかよ!


慌てて


「 俺がっ…


そう言いかけた時


「 ナルト、おまえは無理だ 」


ばぁちゃんから、冷やかな一言


なんでか考えると、思い当たる理由は 一つしかない


「 九尾がいるから… か 」


頷くばっちゃん


目の前が真っ暗になる… 正にそんな言葉がピッタリだった


子を作る


それは、願っても無い事だ


俺達の血筋を絶やさなくて済むし


なにより、家族が作れるのだ


ずっと1人で生きてきた俺にとって、家族と言うのは憧れそのもので 


願っても願っても、叶わない夢だったから…


多分、カカシ先生は大人だから そんな事口にはしないが


同じ境遇の先生も、少なからず想いは同じハズ


ましてそれが、最愛のカカシ先生と築けるなんて 願っても無い


それに、先生そっくりな 美人な女の子もすげぇ見てみたい


でも、そんな叶わないと思っていた夢のような事と引き換えに


先生の命が危険に晒されるなんて…


そんな選択… 俺にはできない


難しい顔で考え込む俺の頭の中なんて


ばぁちゃんには、お見通しで


「 ナルト… どっちかだ 」


声のトーンを落として、ゆっくりとそう最後通告を告げられた


どっちか… その言葉の意味を噛締める


俺も、もう何も知らない子供じゃナイ


多分、別れない…という選択は出来ないのだろう事は察しがついた


「 今すぐとは言わない、2人で話し合って決ろ 」


余りの俺の動揺振りに、ばぁちゃんはそう告げると部屋を後にした



残された俺とカカシ先生は、暫く沈黙で


やっと口を開いたのは、先生からだった


「 参ったね… 」


マスクの上から、頬を掻きながら 俺に視線を向ける


その眉毛は、ハの字で


俺は堪らなくなって、思わず先生を抱きしめた


その肩口に顔を埋め、体重を掛けるよに密着面を増やす


こういう 抱きしめたり 手を握ったり とかっていう行為は、だいたい俺の方からする事が多い


カカシ先生からしてくる事は、めったに無いし あからさまに嫌な顔をされる事も多いが


それでも俺は、この手のスキンシップが好きだ


ガキの頃から1人だったからなのか、他人の体温を近くに感じると酷く安心する


今も、隙間なく貼り着いた上半身から カカシ先生の鼓動が伝わり


段々と、互いの音がシンクロしていく 


その瞬間が好きだ


先生はいつも棒立ちで俺に抱きしめられているが


全然それじゃ足りなくて、両の腕を先生の背中に回し 更にグイグイと自分に押し付けると


「 ナルト… ちょっと、 苦しいし 重いから 」


とか不満を口にしながらも、おずおずとその腕を俺の背に回し 


小刻みに震える手が、遠慮がちに背後のシャツを掴む


そんな時、この人がたまらなく 愛しいと思うんだ


「 ナ、ナルト… 」


先生の困った声 これも好き


背中を数度叩かれるケド 全然緩める気が無い俺に呆れて 溜息吐き


「 俺は… 綱手様の提案を、受けるよ… 」


ハッキリと口にしてから、俺の後ろ髪を撫でた


「 俺は… 

 先生が居れば 何もいらない… 」







続く






 

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