東方求望記
□もうひとつの願い
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霊夢 「でも、これは完全に昨晩のことを見られてるわね。でも、奈々にいきなり見られたのはまずい・・・。ほら、貴将、起きなさい。行くわよ」
「っ、どこに?」
霊夢 「奈々を探しに行くに決まってるでしょ」
「そうだけど・・・」
霊夢 「8割くらい、あんたの所為なんだから。ビシっとしなさい」
「やっぱり、俺の所為なのか・・残りの2割は、霊夢の所為なのか」
霊夢 「細かいことは気にしない。さあ、行くわよ」
口答えは許さないっといった風に霊夢は言った。
かくして、奈々の捜索は始まった。
その頃、奈々は、
奈々 「なによ、貴将ったら。嘘なんかついて」
奈々は、能力の腕を使って目にも止まらぬ速さで跳躍を繰り返していた。
奈々 「でも、こんなことになるんだったら、もっと早く貴将に伝えるんだったなぁ」
ある程度、遠くに来たところで能力の使用をやめて、森の中をとぼとぼと歩き出す。
奈々 「これから、どうしよ。貴将と一緒にいたいけど、戻りづらいな・・・」
奈々は空を見上げながら、独り森の中を当てもなく歩いていった。
一方、貴将たちは。
霊夢 「二手に分かれて探すわよ」
「ああ、霊夢は空から、俺は地上からでいいよね」
霊夢 「いいと言うか、それしかないわよね」
「うっ、まあ、そうだけど」
そう、貴書は空を飛ぶことが出来ないのだ。そもそも、空を飛ぶ練習すらしていない。貴将の能力は影を操る、空を飛べばその能力を生かす事はほとんど出来ない。能力は強くても身体能力は、それほど高くないので(といっても、弱い妖怪なら数匹程度には勝てるのだが)、空を飛びたくないと言う訳なのである。
「取り敢えず、夜になるまで根気よく探そう。それで、見つけたらよくわからないけど話し合おう」
霊夢 「まだ、わかってないの・・・」
「いや、情報が少なすぎる」
霊夢 「むしろ、多すぎるわよ」
霊夢が、呆れて激しく突っ込む。
「っ、ボケてないのに」
と言ったが霊夢はすでに飛び立っていた。
「・・・」
霊夢もわけがわからん。
貴将は、石段を降りた先にある森の中から探す事にした。
「どうやら、今回の出来事は俺の所為らしい」
貴将は、奈々を探しながら朝の出来事について考えていた。
「霊夢は、たぶん昨日のことを怒っていて、それを笑顔で隠していた。で合ってるだろう」
もちろん、合ってはいない。
「問題は、家出までした奈々。起きた時、既に怒っていたという事は、奈々が眠る前に、原因があるはず。思い当たる節と言えば、昨日のちょっと長かった愚痴か、奈々をほったらかしにしてやっていた弾幕ごっこか?」
もちろん、違う。
「いや、弾幕ごっこについてなら、霊夢に怒るのが普通だろう。残るは愚痴だけど。あっ、今朝、奈々が言った昨晩起きたことってのは、奈々が寝た後のことではなく、俺が奈々に愚痴を喋り尽くしたことを嫌味で言ってたのか」
勝手に納得しだす。
「確かに愚痴を言い切ったら気分は晴れるよな。いいこと、って表現にも頷ける」
頷けません!!
と貴将は勝手に自己解決してしまった。
そして時は過ぎて日没後。
「結局、日没までに見つからなかったか。まあ、原因はわかってるんだし、さっさと謝って仲直りしよう」
貴将は集中して自分の影を操って大きな影、つまり、地球の影と繋げて、奈々の居場所を探す。
「見つけた。でも、随分遠くにいるな。まあ、関係ないけど」
貴将は、そう言うと自分の影の中に潜った。
その数分前、
奈々 「もう、夜か・・・。貴将は、探してくれるかな・・・。会いたいけど、会いたくない・・・。戻りたいけど、戻り難い・・・・・・」
奈々は、木の幹に寄りかかって座っていた。
奈々 「一年前に戻りたい・・・」
と、呟いて顔を上げるとそこには貴将がいた。ちょうど今来たところらしい。
「自分勝手なことして、悪かった」
と貴将は頭を下げた。
奈々 「何で、謝るの?良かったじゃない。私のことなら気にしなくていいのよ」
奈々は自嘲気味に言った。
「いや、今思えば、あんなつまらないことを永遠と聞かされれば、誰だって気分悪くなるよな」
奈々 「?何の話? 霊夢に何か言ったの?」
「?霊夢? まあ、確かに昨晩泣かしちゃったけど」