東方求望記

□もうひとつの願い
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貴将と霊夢が抱きしめ合った翌日。

貴将がいつも通り、朝食の用意を済ませ霊夢と奈々を呼びにいく。時間はAM07:00頃、早朝と言うほどでもないのだが、普段は二人ともまだ寝ているため呼びにいくと言うより、起こしにいくと言うほうが正しい。しかし、今日は違った。
まず、霊夢を起こそうと部屋に向かうが、食事の間を出る前に霊夢がやって来た。

霊夢 「貴将、おはよう。今日もいい天気ね♪」

しかも霊夢は明らかに上機嫌だった。

「あれ、霊夢今日は早いね」

霊夢 「なに言ってるの、いつも通りじゃない」

「それに昨日って晴れだっけ?」

霊夢 「細かいことは気にしない」

にこにこと笑顔で話す霊夢に貴将は

{あれ、昨日のことで不機嫌だと思ったけど上機嫌だな。いや、実は怒っているのを笑顔で誤魔化しているのか?}

相変わらず、脱線した思考をしていた。

「まあ、いいや。奈々を起こして来るよ」

貴将は、この後の霊夢の対応について考えながら奈々の部屋へと向かう。この後、貴将の思考は脱線どころか道なき道を走り出すことになる。

貴将は、奈々の部屋の前に着くとすぐに襖を開ける。いつも通り、ノックはしない。

「おーい、起きろー・って、あれ」

今日は、霊夢に引き続き奈々まですでに起きている。奈々の場合は起きたと言う表現は正しくない。

奈々 「・・・」

奈々は、貴将が部屋に入ってくるとすぐに反対方向を向いた。

「奈々も、早いな・って、どうかしたのか」

奈々 「・・・」

奈々は、何も言わない。

「おいおい、せっかく呼びに来たのにそれはないでしょ」

といつも通りの軽いノリで奈々のか顔を覗き込む。が、そこにあった顔は目の下を黒くし、目を真っ赤に腫らしていた。

「えっ、ちょっ、どうした・・の?」

奈々 「な何でもないわよ」

奈々は、声を張り上げて言い、また反対側を向く。

「目が、真っ赤じゃないか。病気かも・」

奈々 「違うわよ」

貴将が言い終える間に奈々がその言葉を遮る。

「怒ってる?」

奈々 「怒ってない。そんなことより、貴将。何だがとっても上機嫌じゃない。昨晩何かいいことでもあったのかしら」

奈々が、急に話題を変えて、貴将に突っ掛かる。

「別に、上機嫌って訳でもないけど。昨晩は、奈々が寝ちゃった後に霊夢と少し話して寝たくらいだよ」

奈々 「何の話をしてたの?」

奈々は言葉に怒りと嫉妬を織り交ぜて静かに言った。

「今日の予定を少し」

奈々 「っ」

奈々は何かを言おうとしたが、それを飲み込みさっさと部屋を出て行ってしまった。

「なんで、奈々が怒ってるんだ。霊夢が怒っているのなら理解できるけど、なぜ奈々?怒ってると見せかけて実は喜んでる?んなわけないか。喜ぶ理由もないか・・・」

もはや、混乱していた貴将は、廊下に滴が落ちてることに全く気がつかなかった。
貴将は、独り食事の間に戻るがそこには奈々の姿はなかった。

「奈々来なかった?」

霊夢 「今、呼びに行ったんじゃないの」

「はあぁあ? もう、何がなんだかわからない」

貴将は、投げ遣りにその場で寝っ転がる。

霊夢 「ちょっと、いきなり何をやってるの」

霊夢は、驚いて立ち上がり、貴将のそばに駆け寄る。

「考えすぎて、頭が痛い・・・」

霊夢 「頭が痛くなるほど、何を考えていたのよ」

「実は、かくかくじかじかで」貴将は、奈々とのやり取りについて霊夢に話した。ついでに、霊夢の行動の意味もわからないと話した。

霊夢 「ねぇ、貴将?」

「何?」

霊夢 「殴っていい?」

言い笑顔で聞いた。

「えっ、そんな、いいわけ・うっ」

ドスッ

霊夢が躊躇いもなく貴将の腹に拳をめり込ませた。


「っっっっっっっっっっっっ」

貴将は、声にならない悲鳴を上げて転げまわった。

霊夢 「ありえない、まさかこんなに鈍いとは・・・」

霊夢は唖然として言う。
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