ご感想・妄想語りコーナー(左)

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03/19(Sat) 21:08
がんだむ

 誰も喋ることのなかった空の旅を終えると、疲労はどっと私の両肩に圧し掛かった。無理をしすぎたかもしれなかった。ここ一週間、まともに寝ていない。寝てなんかいられなかった。私が生きる意味は、今日のためだけにあった。
 飛行船は小学校のグラウンドに着地した。広いグランドはを囲った樹木が、風圧にゆれている。飛行船を降りると、各自解散になった。校長や教頭はそのまま校舎に入っていった。横山も彼らに従った。
 空にはすでに一番星が輝いている。頭上からじわじわと、空を群青が侵食している。陽が沈んでしまったら、もう家に帰れなくなるかもしれない。タクシーでも拾って、早く帰らなければならない。
 校門を出て、タクシーを拾った。運転手は無愛想な男で、エルドラド神殿の近衛兵を彷彿とさせた。私は暗澹とした気分になった。ラジオでかかった明るい曲調の洋楽だけが、今日の私の心を癒した。
 木造アパートにつき、タクシーの運転手に銀行券を二、三枚押し付け、私は鍵を取り出しながらアパートの階段を登っていった。後ろで運転手がなにかわめいているが、貰えるものは貰っておけばいい。善良者ぶる一般人が、私には最も堪えた。私はそれになれない。
 自室の鍵を開け、扉を開くと、私は倒れ込むようにして玄関に入った。疲労と眠気はもう限界まで来ていた。なにもかもはすべて、明日にまわせばいい。怠惰な考えに一も二もなく賛成して、私は目蓋を閉じ、全身の筋肉を弛緩させた。うつ伏せでは息が苦しかったが、どうでもよかった。

「起きるかな?」
「おい、余計なことをするな」
「いいじゃねえか。お、財布があるな。……なんだ、千円しか入ってねえじゃん」
 目を開けると同時に、私は咄嗟に腰を捻った。私の腰に乗っていたらしい若い男の腕を掴み、捻った。若い男が悲鳴を上げ、身を捩るのを確認する前に、両手を掴み、床に押さえつけた。男はうつ伏せのまま、首を無理に捻って、私をにらみつけた。
「おい、あんた」
 私は顔を上げた。
「シャア・アズナブルを知っているか」
 私は首をかしげた。私の額を貫通するものがあった。意識はそこで途絶えた。

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