ご感想・妄想語りコーナー(左)

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03/19(Sat) 21:28
がんだむ

「こいつ、捻りすぎなんだよ。おれ、捻るのには慣れてねえから」
「御託を並べるな。おまえが未熟だっただけだ」
「厳しいなあ」
 目を開けた。灰色の壁が見えた。
「脳波が……」
「ああ」
 若い男の声に、低い声が答えた。私は声の主を探そうとして、思わず肩をすくめた。目の前、すぐ目の前に、ミッフィー人形が置いてあった。
「気付いたか」
 低い声がした。私に話しかけているのだとわかったが、私は返事をしなかった。ここで素直に返事をするのがいいのか、それともあくまで黙りとおすのがいいのか、私は学ばなかった。どうすればいいのかわからない。
「返事をしろ」
「……起きてる」
「そうか」
「なあ、シゲさん。自己紹介しようよ。おれ、こんな重苦しい空気いやだよ」
「おまえは黙ってろ」
「おっさん、おれの名前わかる?」
 どこから声が聞こえているのか探ろうとしたが、三半規管が馬鹿になってしまったのか、声は四方から聞こえているような気がした。せめて目で確認しようとするが、ミッフィー人形が気になって、それから目を離すことができない。唯一わかったのは、私がどこか冷たい床に横たわっていることだけだった。目の前にはコンクリートの壁がある。ミッフィー人形はその前に置かれている。
「おっさん、答えろよ」
 背中に衝撃が走った。蹴られたのかと思ったが、そうではなかった。柔らかいものが私の背中にぶつかったのだった。猫をぶつけられたのだ。猫は私の背中をまわって、私の腹の前に下りた。私の顔の前まで移動すると、床に頬をくっつけた私を馬鹿にするかのように、一声鳴いた。
「可愛いだろ、その猫」
 若い男が言った。猫は小さな鼻を私の顔に押し付け、甘えるように喉を鳴らしている。
「正直たまらない」
「そいつの名前知りたい?」
 私は茶色の猫を見つめながら、少し考えた。
「どうすればいい?」
「おっさん、話がわかるじゃねえか」
「相田! 遊ぶな」
 鋭い叱責が飛んだ。シゲと呼ばれている男の声だった。
「つまんねえなあ、シゲさん。もっと遊び心を覚えてよ」
「首を切られても知らないぞ」
 役職から外されるということなのか、それとも、文字どおりの意味なのか。わからなかったが、相田が黙ったのを聞くと、どちらの意味にも取れた。

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