聖銀の魔法使い

□第9話
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夜空に浮かぶ美しい月が、辺りを照らす――…


「(綺麗な月…)」


そんな美しい月を背景に鳥井の上に立つのは髪の長い人物…


「(私、知ってる…


この人………)」





だが、それはさくらの夢だ…



「さくらちゃん…っさくらちゃん…」


「この人……はっ」


知世の声に薄らと瞳を開けていたさくらはハッと完全に目を冷ます

教室内でHR中だったため、さくらに他のクラスメート達が注目する



「堂々とした居眠りだなぁ木之本。」


「ご、ごめんなさい――っ!!」





さくらが寺田先生に謝っていたその頃…





『…一体、なんだ。桃矢』


「じ――…」


レイは教室の窓から空を見つめていたが、今日の授業中からずっと桃矢に凝視されていることに痺れを切らし本人に問う


「…やっぱな」


『…は?』


何かに納得したかのように呟く桃矢にレイが怪訝な表情を浮かべたときだ…


ドシッ


「何なにどしたぁ〜?木之本、レイがどうかしたのかぁ?」


「安藤…」


『…重い、退け』


「ははっ…怒るなよ〜レイちゃん」


『…うるさい、暑苦しいから離れろ』



腰かけているレイを後ろから抱きつき寄りかかる安藤にレイの眉間にしわが寄る


「…レイがどうかしたの?桃矢」


レイにちょっかいを出す安藤と、それを心底うっとおし気に交わす彼の様子を見ながら雪兎が桃矢に近づく


「…あいつ、無理してる」

「え…?」


桃矢の視線の先にはいつもと変わらないように見えるレイ…
雪兎もそう捉えていたのだが、彼はどうやら違うようだ


「どこか具合が悪いのかな、レイ…」


「…いや、そういうのじゃねぇ」


「?」



桃矢の言葉に疑問を覚える雪兎だが…


『…桃矢、雪兎。』


「あれ?安藤くんは?」


つい先ほどまでレイと一緒にいた安藤はいつの間にかいなくなっていた


『…部活だそうだ』


野球部の部活がこれからすぐにあるのだと、慌てて出ていった安藤を思い返していると…


「レイ。」


『…なんだ』


「大丈夫か…?」


『…?どこも変わったところはないが…』


先程から一体なんだというのか目の前の彼は…


「……そうか。ならいいんだ」


『…、』


どこか悲しげに見つめてくる桃矢にレイは怪訝な表情を浮かべたが…


『…帰るぞ。桃矢、お前は今日バイトだっただろう?』


「あぁ。いくぞ、雪」


「う、うん…。」




校舎の外に出て、バイトである桃矢と別れたあと、雪兎と共に歩みを進めながらレイは一面に広がる青空を瞳に映した


そんな時ふと身近な気配を感じ取った


『…雪兎』


「ん?」


『…あれ』


レイが視線を向ける先を雪兎も習い目を向けると、前方にさくらと知世、小狼の姿があるのに気がついた


「いこう、レイ」


『…あぁ』


「ほら、早く」


クイッ


『…、何故、そんなに急ぐ』


レイの手を掴んで引っ張り、さくら達のもとへ駆け寄ろうとする雪兎。

「せっかくだし、桃矢のとこにみんなで行こうよ」


『…』


「もう、そんな呆れた眼でみないでよレイ」


『…ハァ、行くぞ』


「うんっ」


にこにこ笑う雪兎に引っ張られレイもさくら達に近寄る



「さくらちゃん!」


「「「!」」」


その呼び掛けに3人は振り返ると彼らは顔を真っ赤に染める


「雪兎さんっ!レイさんっ!」


「こんにちは」


『…今帰りか?』


「「はい!!」」


レイの問いにさくらと小狼が元気に答え、それに彼は穏やかに表情を緩める



『…これから何か予定があるか…?』


その問いに3人は首を横に振る


『…そうか、なら丁度いいな』


レイは雪兎に目配りするとそれに応え彼はにこっと笑い頷く


「これからぼくとレイ、ケーキ食べに行くんだけど一緒にいかない?」

雪兎の言葉にこくこくと頷くさくらと小狼にレイはふと知世に視線を向ける


『…知世もいいか…?』


「はい、私もご一緒致しますわ」








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