聖銀の魔法使い

□第9話
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レイと雪兎に案内され、さくらたちはとあるケーキ屋さんに辿り着いた



雪兎の隣にレイが座り、向かい側には知世、さくら、小狼の順に座っている


「ねぇ、レイ。
本当にケーキ頼まなくていいの?」


『…あぁ』

「「……!!」」


砂糖もミルクも入っていない珈琲が入ったカップに口づける彼の姿…
絵になるとはまさにこのことだと見惚れるさくら達…

「レイって本当、美人だよね」


『……なんだいきなり』

頬を薄らと赤らめながら話す雪兎にレイは少々驚然な表情をみせるが、次にはさくら達が自分をボーっと見ていることに気がつく


『…、さくら?小狼?

知世まで、一体どうした…?』


「「「…!」」」


レイの呼び掛けにハッと我にかえる彼らは慌てて何でもないと返答する


「レイって自分のことには鈍いよね」


『…お前は先程から一体何が言いたいんだ』


急に美人だといい、今度は何故か鈍いと言われたことに彼が言いたいことがわからずレイは不機嫌そうに雪兎を横目で見た


「ごめん、ごめん。
そんな拗ねないでよ」


『…拗ねてなどいない』


「はいはい。それよりレイはさくらちゃん達の学芸会の写真もう見た?」

『…あぁ、よく撮れていた』

「すっごく可愛かったよねぇ、王子さまとお姫さま」

『…知世もナレーター上手だった』


「「「あ、ありがとうございます」」」


レイと雪兎からの誉め言葉に3人は照れながらお礼を言う


「面白かったよ―。安藤くんなんか爆笑してたしね」

『…おかげでしばらく背中が痛かったがな』


「そうだね、レイの背中バシバシ叩いてたもんね」


ムスッとするレイに雪兎が苦笑いを浮かべていると…


「あの安藤さんって茶色の髪の人ですか?」


「うん。学芸会のときにレイの隣に座ってた人だよ。同じクラスメートの友達で野球部のエースなんだ

レイとすごく仲良いんだよ」


『…あいつが勝手に寄ってくるだけだ』


「またまたぁ〜満更でもないくせに」


『……最近、妙にお前はおれをからかおうとするな…』


みよーん


「いひゃいいひゃいよ〜」

「「「……」」」


色白の頬を引っ張るレイに雪兎は口では痛いというものの、ニコニコ笑いながらされるがままだ


結局はレイとじゃれ合うのが楽しいようだ


そんな珍しい2人の姿にさくらたちはほんのり頬を赤らめる



「それにしても、途中で真っ暗になっちゃってびっくりしたよね」


『…』


引っ張られ赤くなった頬を擦りながらさくら達に言う雪兎。
レイが彼を無言で見つめていると…


「おまたせしました」


「お兄ちゃん!!」


雪兎の注文した、沢山のケーキを持ってきた桃矢にさくらが驚きの声をあげる


「なんで、お兄ちゃんが…」


「バイト中」


「お兄ちゃんって、本当にどこでもバイトしてるのね」


『…さくら、知世。どのケーキがいい?』


「よろしいのですか?」

「えっと、雪兎さんは…」


バチバチと火花を散らす桃矢と小狼をよそに、さくらと知世に問うレイ。


『…こいつは食えれば何でもいい』


「ひっどいなぁ」


『…本当のことだろう』


「まぁそうだけどね。
うん、だから大丈夫だよ。さくらちゃん、知世ちゃん」


『…小狼も好きなのを選べ』


「おれはどれでも…」


桃矢とのにらみ合いが終わったのを見計らってか、話を振られ戸惑いながら答える小狼。


『…遠慮しなくていい』


「えっと…じゃあ」


悩みながら選ぶさくら、小狼、知世の姿を優しい眼差しで見つめるレイ。

「…」


雪兎はその美しい横顔に見惚れているものの、心情は切なさが込み上げてくるような感覚を覚えた。


それがいったい何故なのかまだ、わからずにいた



『…雪兎?』


「!何、レイ。」


『…どうした、ボーっとして』


「ううん。何でもないよ


さ、食べようか」


『…』


誤魔化すかのような話の変え方に納得はできないが、それを深く問うことはレイはしなかった。



「おいし――!」


『…さくら』


「はい…?」


名前を呼ばれケーキから目を離すさくらだったが、間近に映った伸ばされた手と透き通る青い瞳に目を見開く

さくらの口許についたケーキのクリームを人差し指で取るとついたそれをペロッと赤い舌で舐めとる



「「「――!!!」」」


誰もがその光景に動けないでいたが…






『…よく食えるな、こんな甘いものを』


ガクッ――!


あまりの甘さに眉間に皺を寄せる彼に周りの見ていた客までもがガクッとずり落ちそうになる


あまりの彼のマイペースさと淡々とした様子に雪兎と知世もガクリと肩を下げる

「レイさ…」


『…?どうした。さくら』

顔から湯気が出るほどに真っ赤に染まるさくらを不思議そうに見ていたが…


ガタンッ!


『…、小狼?』

かぁああああ

「―――っ!」



だ―――っ!!!


レイが声をかけるも全速力で走り去っていく彼…


『…?』


「もうさぁ、ここまで来るとたち悪いじゃ済まないよね」


『…おれは何かしたか?』


「レイさんはご自身のことをもっと自覚されるべきですわ」


パコッ


『………、お前までなんだ、桃矢』


桃矢にまで伝票で軽く頭を叩かれ、レイは怪訝な表情で見上げる



「……無意識に色気を振り撒くな」


『……そんなものおれにはないが…』


「「「はぁ……」」」



きょとんとしながら首を傾げる彼の姿に桃矢、雪兎、知世はため息をついた




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