月夜の旅人

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『…もう始まってしまったか』


砂嵐を止め…ユバからアルバーナへ着いたレイはビビと船員達を探す


上空から衝突する反乱軍と国王軍を見つめる


『…』


恐らくビビ以外の船員はB・Wと戦闘しているだろう
このアラバスタでの出来事でルフィ達は大きな成長を遂げるはず


と、その時だ


『…!あれは…』




レイは倒れているカルーと他のカルガモを見つけ、彼らの前に姿を現す


『カルー…』


「!?クエーっ!!!」


『…ビビは王宮へ行ったのか…?』


頷くカルーの前に片膝をつきレイは手を翳す


ポゥ……


「クエ…」


心地よい銀の光にカルーは気持ち良さそうに目を閉じる


『…もう大丈夫だな?』


「クエ!」


治癒をしたレイはカルーの頭を撫で優しく微笑むと、立ち上がる


「クエ?」

『…ビビの元へ今から向かう。

お前たちは安全なところで待っていてくれ』

「クエ!?」


『…何、心配するな。必ず助けるから』


「クエ!!」


ふわりと浮かぶレイをカルーと他のカルガモは見送るしかなかった




―宮殿―


「パパ!!!」


「国王様!!!」


ビビともう一人アラバスタの戦士チャカは両腕を釘で刺され掴まり血を流す


国王…コブラを見つける

コブラの傍らにはクロコダイルとロビンが立っていた

「ビビ…すまん せっかくお前が命を賭けて作ってくれた救国の機会を活かす事ができなかった!!」



「国王様を離せクロコダイル!!」


チャカは息も絶え絶えなコブラを見て叫ぶ


「クク…王の言う事はそりゃまったくだな

…だがミス・ウェンズデー
お前がここへ辿りつけたのも例の海賊達と“氷華”のお陰だ。

感謝の一つでもしてやるんだな」


「ルフィさんとレイさんはどこ!!?
何であんたがここにいるのよ!!!」


「奴なら死んだと言ったろ」


「うそよ!!!ルフィさんがお前なんかに殺される筈がないっ!!!
それにレイさんが一緒だったもの!!!」


「“氷華”はおれと麦わらとの戦いに一切加入しなかった…

あいつが来たのは麦わらがおれに殺された後だ」


「!!!」


信じられない言葉にビビは目を見開く


「今頃は死んだ麦わらを葬っているか…見捨ててこの国から出てるかじゃねぇか?」


「レイさんは……レイさんはそんなことしない!!!
あの人は誰よりも仲間のことを考えてる人で…っ本当に優しい人よ!!!」



《…たった一人救うことの出来ん者が100万人の命を救うことが出来るとは…おれは思わない…》


《…お前は考えが甘すぎる

こんな大規模な戦争と言ってもいい戦いで誰かが死ぬことは目に見えてる…


願望を抱くのは勝手だ

だがな…現実は違うことを知れ》


なんて冷たい人…

なんて厳しい人…


でも――…一つも正しくない言葉なんてなかった

そして…




《…辛ければ泣け、悔しければ怒ればいい

お前は弱音をはいた分、涙を流した以上に前を向いて、自分で立ち直る“強さ”を持ってるだろ》

私のことを認め、ちゃんと私をみてくれていた


仲間を見つめるその眼差し…頭を撫でる華奢で綺麗な手が…どれほど穏やかで優しいかを私は知った





「………」


レイさんはルフィさんをそして私達を見捨ててなんかいない


ルフィさんは死んでなんか、こんな奴に負けてなんかいない…!!


絶対に!!!



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