月夜の旅人

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海底探索王ショウジョウの船からうまく逃げ出せたメリー号は、船を修理するトンカチの音と共に航海を続ける……



「まったく あのオランウータンめっ!!


船をさらに破壊してくれやがってよぉ!!!」


「気がつきゃいつの間にかボロボロだな、この船も…

かえ時か?」


「勝手な事言ってんじゃねぇぞ てめぇまで!!」


『…』


レイがそんなウソップ達を無言で見つめていたときだ、彼の隣にナミが歩みよってきた。


『…?どうしたナミ。』

「ねぇ、レイ。
やっぱり“空島”なんてあいつらが言ってた通り存在しないものなのかしら」

ナミは酒場でのベラミー一味に言われたことを気にしているのだろう。
“記録指針”は簡単に狂うと言われ、“空島”など夢物語に過ぎないと…


『……不安か…?』

「…えぇ。もし“空島”があるとしても
普通に考えて空にある島に行く手段が簡単じゃないことくらいは予想できるし…」

“航海士”としてこの場にいる全員の命を預かっているナミはある意味、恐怖と不安に駆られているのだろう。

常識の通用しないこの“偉大なる航路”…
死と隣り合わせである壮大な海…

未だ航海に出て間もないこともありナミの中にある緊張も凄まじいものだ。


『…“記録指針”に関してはやつらの戯言だ。
それが狂うことは絶対にないが、
“空島”が夢物語である可能性は真っ向から否定は出来ない。
それもすべてこれから会う男の話次第で決まる。』

「…そうよね」

ナミはレイの言葉に少し俯き視線を手元に移す。


『……どちらにせよ、ルフィは“空島”の存在を信じ、意地でも行くと言うだろうな』

「レイはどうなの?」

『…』

ふと、考えるように瞳を閉じるが
すぐに蒼い瞳は開かれ、船医や狙撃手と笑い合っている麦わらの船長に視線を向けた。


『……おれは自分で見たものしか信じない。』

“空島”の存在を他人の有無の言葉で判断するつもりはない。
それは自分の目で確かめるしか方法はない。


つまり、“空島”に航路を進めることを辞めるつもりはないとそういうことだ。



『…』

コツッ 「!」


レイは今だ不安気なナミの様子に見かねてか、彼女の額に軽く拳を当てる

『…難しく考えるな…。
おれが易々とお前たちを死なせる訳がないだろう。』

「ーーレイ…。」

呆れたようにため息をつき見つめてくる彼にナミはやっと笑みを浮かべた。



『…そろそろ地図の場所に着くぞ。』

「えぇ!ありがとうレイ!」


いつものような調子に戻り離れて行ったナミにレイは瞳を緩めてその後ろ姿を見つめた。





………………


―ジャヤ東の海岸―



「着いたわ地図の場所

ここに例の…誰だっけ」


「モンブラン・クリケット」


「―――その夢を語る男が住んでるのね?」


「す…」


「すげぇ!!!」


ルフィ達の目の前には豪華な城が立っていた


「あれがそいつの家なのか!!?」


「すっげぇ金持ちなんじゃねぇのか!?」


『…いや、よく見てみろ』


「夢見る男ねぇ…

見栄っ張りではある様だな」


レイとサンジの言葉にルフィ達は疑問を覚えるが……


「げ!!!


ただの板!!?」


「「何―――っ!!?」」


『…当の家も半分だけか』


「あとはベニヤ造りだな」

「ずいぶんとケチな男らしいな…」


「一体どんな夢を語って町を追われたの?」


「くわしくはわからないけど……


このジャヤという島には
莫大な黄金が眠っていると言ってるらしいわ」


「「「黄金!!?」」」


黄金と言う言葉に目を輝かせるルフィ達…


「どっかの海賊の埋蔵金かなにか!?」


「さぁ…どうかしらね」


『…』


「?どうかしたの “氷華”さん」


『…いや』


海を見つめるレイをロビンは気になったが、深く聞かなかった


「こんにちは――!!
おじゃまします!!」


「おめぇはイキナリかよ!!!」


家の扉を開け、ズカズカと中に入るルフィ…


「ん?誰もいねぇな」


だが、家の中には誰もいなかった


「! 絵本……」


ナミはふと木の机の上に置いてあった絵本を見つけ、手に取る


「――ずいぶん年期の入った本ね

《うそつきノーランド》だって あはは」


「ほ―イカス タイトルだな 題材がいいぜ」


『…ナミ それ“北の海”〈ノースブルー〉の発行だろう?』


「そうだけど レイ知ってるの?」


『…読んだことはないが、見たことはある

サンジの方が詳しいはずだ……』


「サンジくんが…?」


ナミはレイの言葉を聞き、サンジに視線を向ける



「ん?おれがどうかしたか?」


『……お前、《うそつきノーランド》という話を知っているだろう?』


「え…?あぁ 懐かしいな
ガキの頃よく読んだよ」




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