NOVEL1

□強すぎる純愛
1ページ/3ページ

あれはほんの出来心で


少しの好奇心だった




「好きだ」



君にそう言われて


僕の心は驚きも弾みもしなかった


単純で誠実な君だからこういう恋愛はうといのかと思ったけど

単純で誠実だから君は一途


ただ真っすぐに僕を愛す


それは重く苦しいほどに



付き合う気なんてさらさらないけど、面白そうだから


君の気持ちを試した







寒い寒い日

雪のちらつきそうな空


「外出しましょうか」


そう誘ったのは僕


君は僕の申し出に驚く


指定した時間に君は街に出る




待ち人など来ないのに








「なあ、ユウ知らない?」

「へ、いないんですか?」

僕の部屋を尋ねたのは怒りに震える彼じゃなく、彼の友人


「うーんなんか朝から妙に機嫌よかったんだけどどこ行くんか教えてくれなかったんさ」

「そうですか」


まさか


まさか





外は夜を深くしてさらに冷え込んでいる


気が付けばちらつきはじめていた雪は粉雪からぼたん雪へ


もううっすら積もってるのではないだろうか





「まさか…まさかね」


「どうしたんさ?」




ああどうしてだろう


君は未だ僕を待っている



その確信を拭えない




やめてくれ


そんな重々しい愛には僕は耐えられない



それでも君を無視できないのはなぜだろう


嫌いだと言えないのはなぜだろう



君は僕にとって異端の存在



お願いだから僕の平和を乱さないでくれ








外ははらはら大きな雪粒が舞う


「神田…」


人影のない街に君は身を丸くして待っていた


白い肌が今は青く見えるほど血色が悪い

唇も紫色になり


いつもの張り詰めた美しさがない

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ