NOVEL1
□桜酒
1ページ/1ページ
ひらり
ひらり
舞い散る薄桃の花びら
波紋を描き
透明の酒に浮かぶ
「いい夜だ」
「……あの」
「なんだ」
「なんで俺は元帥に呼ばれたんですか」
たぷん
猪口を傾け桜酒を喉に下す
「そりゃ、あれだ。いい桜といい酒があれば傍にはいい女がいるだろ?」
「俺は女じゃないです」
「んなことはわかってる。例えだ。拗ねるなよ」
ちゅっと酒に濡れた唇が触れる
「ん…何す//」
「黙ってろよ、美人なんだからよ」
「っ…///」
桜に浮かぶその色気を感じさせる笑みに神田は紅くなる
「ふふ…お前も飲め」
「いや、俺は…酒は」
「何いい子ぶってんだ、一杯だけ付き合え」
「ぅ……はい」
別に絡んでくるわけではないが有無を言わさない威圧感にしぶしぶ猪口を受け取る
とくとく
満たされる透明
ひらり
舞う桜
こくり
喉に下せばじんわり体に染み込む
「…お前は//」
「?…元帥?」
その呑み方があまりに妖艶でクロスは苦笑いをした
「いい桜といい酒、それにいい女が酒を飲めば最高だな」
「俺は女じゃないです」
「例えだ」
ふっと笑い合う
ふわり
ふわり
桜が舞った
【END】