NOVEL1

□優しい甘味
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「うわぁ」

「すごいですね!」

あちこちに大量に落ちているどんぐりを小さな手が拾いあげていく


「お前ら掃除するんだぞ?」

呆れたように言いながらも楽しそうなラビは竹箒で落ち葉を集めていく

神田も黙々と熊手で寄せ集めていた

「落ち葉もこれだけあると圧巻ですね」

アレンはにゃんだと集めた落ち葉を一ヶ所に運んでいた

「はははっあれんおちばまみれー!」

「にゃんだだって頭についてますよ」

「むっ!どこ?」

ひょいっと摘まんで見せればにっこりと笑う

「おそろいだな」

にゃんだもアレンについた紅葉を摘まんだ


「なんか、楽しそうさねー……ってユウ?」

カップルのイチャイチャに当てられながら自分の恋人を見たラビは目を見開く

「それ、何さ」

「芋」

「芋?なんで?」

「焼くから」

「…ここで?」

「ああ」

実に慣れた手つきでホイルに包んださつまいもを仕込み火をつけていく

「着きが悪いな。お前のイノセンスで着けろ」

「無理!炭になっちゃうさ」

「ちっ…」

理不尽じゃね?

ラビは不本意な怒りをぶつけられちょっと泣きたくなった


そんなこんなで庭がきれいになり粗方片付いたころには落ち葉も灰となっていた

「焼けたぞ」

「なになに!」

「焼き芋ですね」

食べ盛り二人組はうきうきと出てくる芋を受けとる

「熱いから…」

「にゃんだは猫舌なんだからよく冷まして食べましょうね」

「うん」

いらぬ心配かと神田は他の芋に向き直る


「ほら」

ぴと

「あっっついさー!」

「焼きたてだ、食え」

「ユウ…焼きたては顔に当てちゃだめさ」

受け取った半分の芋を頬張る

柔らかい甘味が秋を感じさせてくれる


「焼き芋は…」

「ん?」

「あいつが好きだったんだ」

神田はこんな風に無邪気に何かを一緒にできる相手は少ない

「いなくなってからはなんでか分かんねぇが元帥が毎年やって…」

「いい思い出なんさね」

「いや、毎年ぼや騒ぎになるから俺がやらないといけなかった」

「そ、そうなんさ?マリは?」

「盲目の奴に火扱わせられるか」

焼き芋はいい思い出なんだか悪い思い出なんだか分からないが、神田は焼き芋事態は嫌いではないのだろう


多分、また来年もこうして焚き火を囲むのだろうと漠然と思うラビだった

【END】
 

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