NOVEL2

□二人のこどもの日
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トントン

「ユウ」

「くるな」



今日もか



ここ最近神田は元気がない


本人は否定してるけどどうやらホームシックになっているらしい



「ユウ入れて、ほら勉強の時間だし」

「今日は…したくない」

「昨日もしなかったさ、じゃあ今日は休みにして遊ぼうさ」

「嫌だ」

「でもいつまでも閉じこもってちゃだめさ」

「嫌なもんは嫌なんだ」


昨日の夕食も持ってきてようやく食べたくらいだ

いくらなんでも体が弱ってしまう



「ユ…」

「しつこい!くるなよ!…ラビなんか嫌いだ!」


俺の中で何かが割れた気がした


「…っこんなに心配してるのに……上等さ!!」



がぁぁんっ!!?


ぱらぱらぱら



イノセンスを最大に発動してドアを破壊した

木屑まみれで唖然とする神田



「一人で泣いてないで出てこいさ」

「泣いてなんか…っつーか何やってんだ!」

「意地っ張りだから迎えに来てやっただけさ、ほらおいで」

「嫌…」


拒否しようと動いた体を抱きしめぽんぽんと頭を撫でる

神田は小さく抵抗しながらもされるがまま


「ユウ会いたかった」

「…何恥ずかしいこと言ってんだよ」

「へへっ」


その暖かさに飲み込まれるように神田の心はじんわり暖まり安堵する



「ねぇユウ」

「ん?」

「今日はさ、ユウの国の勉強しよ?俺に教えてさ」

「俺の?」


しばらく悲しそうな、寂しそうな顔を浮かべた神田だが、静かに頷いた


「わかった」





「じゃあ今日は……うーん……今日は」

「なんか風習とかないんさ?」

「ふーしゅう?」

「そっ行事みたいなもん!クリスマスとかハロウィンとか!」

「行事か……あっ」

「何なに?」

「今日は五日だよな」


ちらりとカレンダーに目を移し確認する


「そうさ」

「今日は『子どもの日』だ」

「子どもの日?何さ?子どもが生まれた記念日?」

「違う、男の子のお祝いの日なんだ」

「へぇ、何するんさ」


うーんと悩みながら神田はがさがさ紙を探し始めた


「何かいるなら俺も手伝うさ」

「じゃあ新聞と色紙と広告」

「?、わかったさ、何か作るんさね」



それだけ聞くとラビは部屋を出て探しにいく

神田も何か思い出したのか厨房に足を運んだ




「ユウ〜って、あれ?どこいったんさ」

「あったか」


外からハサミとテープとのりを持ってきた神田


「何作るんさ」

わくわくと眺めるラビ


「ラビも作るんだ」

「俺も?」

「うん」


そう言うとさっそく新聞をがさがさ折り始める

ラビもまねして折る



「兜って言うんだ」

「かぶと?あの鎧の?」

「うん、紙で作るやつだけどな」

「へぇ、紙で作れるなんてすげぇ」


やがて出来上がったのを二人で被り、今度は色紙を切っていく


「ユウそれ何の形?」

「鯉だ」

「こい?」

「こいのぼり作るんだ」

「ふーん……でも鯉にはみえないさ」

「ほっとけ//」

「くすくす」


吹き流しも作り、広告の棒に鯉をつければこいのぼりの出来上がり


「すげぇ、なんか楽しいね『子どもの日』」


はしゃぐラビをよそに神田は時間をちらっと見て立ち上がる


「どこいくんさ」

「食堂、ラビも一緒に」

「うん」



とんとん食堂へ降りていけばジェリーが待ってましたとばかりに手招きする


「神田!出来てるわよん」

「…ありがとぅ//」

「いいのよいいのよ、もうっ可愛いわね、あんたは」


はいっと渡されたのは葉っぱで巻いた餅と笹で包まれた棒


「ユウこれは?」

「ちまきと柏餅」

「ふーん」


ちまきっておこわかな?


出てきたのは甘いお餅



「ほら、食うぞ」

「あ、うんいただきます」

「いただきます」



もぐ


もぐもぐ




「なんつーか…素朴な味がするさ」

「……」

「でも、うまいさ」

「……」

「ユウ?」



「………ひくっ」


ぽたっと零れた涙


もぐもぐ頬張りながら涙を流し続ける神田

ラビはなんだか申し訳ない、悲しさでいっぱいになった


「ユウ、ごめんな」

「ひっぅ…くっ…ひくっ」

「寂しいのに…その、思い出させるみたいなことして…」


ふるふる首を振る


「らび…ひくっいるから…へ…き」

「ユウ」

「ひぐ…また…俺の…行事っ…ひっく…やってい?」

「もちろんさ」


にっこり笑うと神田はぐしぐしと涙を拭いまた柏餅を頬張った







それから『こいのぼり』の歌を教えてくれて二人で歌った


「音痴だな」


って笑う姿にラビは嬉しくなった


【END】
 

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