NOVEL3

□第二章
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「ユウ」



「ユウ」




がんっ




「痛ってぇ!」

「てめぇのことだろうが!」



なんでこいつこんなに怒ってんだ




「ユウ」




ユウ?




ああ、俺の名前か




「なんだよ」



今まで名前なんてなかったんだ、急に呼ばれても反応できるかっ



「着いたぞ、降りろ」


相変わらず言葉は通じないが岸を指差され理解する



「わかったよ」


頷いて男に従う


「たしか何っていったっけ…くろ…くろす何とかだよな」

「クロスマリアン」

皺枯れた声が聞こえた


「ようこそ、新たな同胞よ」


あ…日本語…


岸には目に真っ黒の隈をした爺が立っていた


「初めまして、長旅ご苦労じゃったな」

「いや、別に」

「わしは名前はない、ブックマンとでも呼んでくれ」

俺と一緒だ


「俺は…神田ユウ」


「ふむ、神田か…ちと聞くがおぬしいくつだ?」

「八つ」

「随分しっかりしておるの。うちの馬鹿弟子と同じか……そのうち会うじゃろうに仲良くしてやってくれ」


同い年と言われても友達など作ったことがないからどう接すればいいかわからない

ただ俺は黙っていて、ブックマンはそれを肯定ととったようだった
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