桜の木の下で
□ショートショートストーリー
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秋風思えば
9月も終わりを告げ10月が始まり早一週間が経とうとしていた。
そんなある日に僕は実行委員ということもあり教室に居残り文化祭の準備を地味にだが着々と進めていた。
「どうよ、進み具合は?」
「まあまあ、ですね」
隣で補習勉強に励む愁君に僕は手を停めることなく答えた。
「あっそ」
愁君はそう言うとやりかけの課題に視線を移した。
それから、お互い話すことも無く仕事を進めた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
記入するべき書類に一通り記入しふと顔を上げると赤い陽が差していることに気付いた。
時計を見ればもう5時近く。
早く行かなければ担任は帰ってしまう。
部活の顧問でもない担任は最低時間しかいない。
「終わったのかよ?」
「ええ、先生に見せてきます」
「ん、行ってらぁ〜」
愁君は眠そうに目を擦りながら急ぐ僕を見送っていた。
「なんとか間に合いましか・・・」
「あと5分遅れていたら俺は帰っていたな」
ギリギリ下駄箱で靴を履き替えている担任を見つけて声を掛けて今に至る。
「わざわざ待って頂いてありがとうございます」
僕は嫌味を込めて返し目の前にいる担任・速水先生に半ば書類を押し付けるように渡した。
それを受け取り満足げに片手を振って先生は校門を出て行った。
「さぁ、帰りましょうか」
僕は一人呟いて教室へと踵を返した。