桜の木の下で
□ショートショートストーリー
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「zzz・・・」
「寝てますね」
僕が教室に戻って最初に見たのは愁君の寝顔だった。
どうやら、僕が先生の所に行っている間に爆睡してしまったようだ。
ふと、彼の下敷きになっている課題の数々は見るに耐えないミミズの這ったような字ではあったが全て終わっていた。
「聞ぃけ、てぇとぉ・・・」
「?」
名前を呼ばれて彼を見れば心地良さそうにうにゃうにゃと口を動かしていた。
どうやら寝言らしい。
「どんな夢を見ているんでしょうかね?」
「文化祭はぁ・・・」
「文化祭は?」
僕は彼の口走る言葉をもう一度言ってみる。
「負けないぞー!!ってあれ?」
突然立ち上がりそう叫んだ愁君は自分の声で目覚めたらしく、焦点の合わない目で僕を見た。
「あれ、帝都・・・?」
「お目覚めですか?」
僕は唖然としていたが愁君に名前を呼ばれ我に返り不敵に笑った。
「帰りましょうか」
「え?お、おう」
少し遅れながら愁君は僕の後を追いかけてきた。
この後、僕達は他愛ない話をしながら、普段より少し遠回りして帰った。
こんな毎日が僕の大切なんですよ。
皆さんにもありませんか?
他愛の無い愛しい瞬間が・・・