桜の木の下で
□第四話 集合
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帝都と愁が部屋を出てリビングに入るとそこには土鍋を火に掛ける直人と春がいた。
「おはようございます」
「あっ!帝都さんおはよう。もう大丈夫なの?」
「はい、おかげさまで」
努めて明るく振る舞う春に帝都はいつもと変わらない表情を向ける。
直人は黙って鍋に蓋をしている。
そこでやっと愁はさっきまでそこにいたはずの人物がいなくなっていることに気付いた。
「あれ?翔太と光はどこいったんだ?」
「あの馬鹿コンビなら買い出しに行かせた」
辺りを見回す愁に直人はぶっきらぼうに答えた。
相当こき使われているらいし。
「そうですか…」
「それより、そこにある鍋敷きを置け」
「あっ、はい」
「返事はいいから早く敷け」
急いで愁が直人に言われるがままに隣の棚の中に収まっていた鍋敷きを自分の手近な席側に敷くと直人は鍋を置き、椅子を引いてそこに帝都を座らせた。
「薬膳料理ださっさと食え。それから、あの馬鹿コンビが戻って来たら事の次第を話してもらう」
「……はい」
「欠食児童が帰って来ない内に食い終われ」
「クスッ…そうですね。それでは、いただきます」
翔太の顔を思い浮かべ苦笑しながら帝都が土鍋を開けると中には身体に負担の少ない白湯が湯気を昇らせていた。
さらさらとした程よい煮込み具合の食欲を誘う見た目。
「それぐらいなら食えるだろう」
「ありがとうございます」
「それと、そこに材料があるから愁と春は今から俺と全員分の料理を作る」
少し微笑む帝都に満足したように直人はレンゲを土鍋の端に差し込んだ後に台所に積まれた食料の山を指差した。
「一体どこにこれだけの食材があるんだよ…」
「家から拝借した」
「さいですか…」
人参、キャベツ、ゴボウ、キュウリ、生姜、ets…の山に愁はため息しか出なかった。
これだけの食材があればだいたいの料理は出来るだろう。
そう考え直人は家の倉庫にあった食材を翔太と光に取りに行かせていたのだ。
「帝都はゆっくり食えよ」
「食欲があったら今から作るヤツも食ってかまわないからな」
「はい、そうします」
帝都の返事を聞いて三人は台所へと消えた。