桜の木の下で

□腐れ縁
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4月某日

今日は入学式があった。
何事もなく無難な一年が過ごせるかどうかが決まるクラス発表もやはりあるわけで・・・

「やっとたるい入学式が終わったぜー」

「次はクラス発表ですね」

あくびをしながら体育館を出る俺の後ろから聞きなれた声がした。
俺はもう呆れて振り返る事もしない。
なんせ見たくもない。
それぐらい見ているからだ。

「そもそも、なんでお前がここにいるんだよ」

「受験に受かったからに決まってるじゃないですか、そんなことも分らないんですか?」

「んなもんは言われなくたって分かってる!!」

俺は少し声を荒げた。
それに声の主、一条帝都は驚くこともしないで呆れた視線を送ってきた。
なんで俺がそんな視線を受けないといけないんだ。
イライラを隠す事もしないで俺は歩調を早めた。
そこに、帝都とは別の聞きなれた声がした。
そっちを見るとそこにはパツ金の幼馴染、東雲瑞貴がいた。
なんでこう高校に入ってまで見たくもない顔をこうも拝まないといけないんだ。

「帝都、愁。置いてくなんて酷いやっちゃな!!」

「お前らの顔なんぞ高校に入ってまでも拝まないといけない俺の心境を察しろ・・・」

「なにを言ってるんですか?僕らは多分クラスも一緒になりますよ」

「なんでそう言いきれるんだよ」

「だって、中学の三年間クラスが一度でも離れたことがありましたか?」

「・・・ない」

「でしょう?」

「ええやないか。この三人の仲や」

「何の呪いだ」

「呪いだなんて失礼ですね。まあ、根拠はないですけど」

帝都は面白そうに笑うと俺より一歩先を歩き出した。
俺は確かなジンクスを否定したい思いもそこそこに帝都の隣に並んだ。
そこで俺は後悔した。

「タアー!!」

「ぐあっ!!」

俺は前につんのめってこけた。
俺の上には瑞貴がふてくされてのっかている。
瑞貴が後ろからダイブしてきたのだ。

「何しやがる瑞貴!!」

「へっ!!瑞貴スペシャルだ!!参ったか。瑞貴様を無視するからだ!!」

「んだと!!」

俺は瑞貴を背中から落として立ち上がった。
案の定瑞貴は俺の背中から落ちてしりもちをついていた。

「瑞貴君、関西弁取れてますよ?」

隣から帝都の笑いを堪える震えた声がした。
俺と瑞貴はぽかんとしていたが、帝都の言葉を理解すると瑞貴は慌てて口を塞いだ。
こいつの関西弁は趣味で本来は関西弁じゃない。
だから時々、関西弁が取れてしまう。

「んっん。すまんかったな、それよりクラス発表見に行かんでええんか?」

「あっ!!忘れてた!!」

辺りを見渡せばもう人影はまばらでほとんどがクラスに移動したらしい。
慌てて俺が走り出せば帝都と瑞貴も走り出す。
そのまま、競うように掲示板にたどり着きクラスの掲示を見て誰の策略なんだと呻いたのは言うまでもない。





一条帝都・・・1年3組




三崎 愁・・・1年3組




東雲瑞貴・・・1年3組




見事に俺たちが離れることはなかった・・・。

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