桜の木の下で

□ショートショートストーリー
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ある昼放課のこと。
俺は一人いつもみたく屋上で飯を食っていた。
空は青いし春風が心地よい。
俺はぼんやりと手製のたまごやきを箸でつまみ口にしようとした。

―ガシャンッ!!

破壊音と共に呼びもしないはた迷惑の塊な奴がやって来た。

「直人ぉー!!」

軽やかな身のこなしでダイブしてくる奴を避け零れかけた弁当を庇う。

「酷いぞ直人!!」

ダイブしておきながら人を指差すコイツは一条薫。
あっけらかんとした性格の一言で言えば『へんなやつ』だ。

「うるさい。何の用だ」

「んや?特にねぇけど」

「だったら…」

「?」

「一々ダイブするなこの馬鹿が!!」

―パカーンッ!!

「オギャッ!!」

薫の短い悲鳴が上がる。
当たり前だ。
俺が履いていた上履きでヤツの額を力いっぱい叩いたからだ。
ようは、スリッパでゴキブ〇を叩くように叩いたのだ。

「いくらなんでも酷いぞ直人!!」

「酷くないか、だと?」

「ヒッ!!」

俺の殺気に当てられたのか後ろに飛び上がる薫。
その表情に気の抜けた俺は呆れて溜め息一つと共にコンクリートの床に座り込んだ。

「まったく。荻野はどうした?」

「おっちゃんか?おっちゃんなら…」

―バカンッ!!

「おっちゃん言うなこのタコ助が!!」

「俺は薫だ!!」

「…」

「俺だっておっちゃんちゃうわ!!ええかげんにせぇよ!!」

「荻野だから、おっちゃんじゃん!!」

「そやったら、お前は『かぁちゃん』や!!」

「なんでだよ!!」

「薫だからかぁちゃんや」

くだらねぇ、そのうえウザイ

俺は再び上履きを握り立ち上がり騒ぐ二人の額を叩いた…。

空には叩く音と二つの悲鳴が響いた。


それが俺達の昼休み。




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