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□残さず食べて。
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それは慈郎の癖。

「ねぇ忍足、知ってる?」



彼女はいつも、気まぐれに問いかける。
それは今話題の歌手の噂話だったり、学園につきもののくだらない迷信だったり、また学食の日替わりメニューについてだったりといつも様々だ。
その時々の会話に関係なく、ふと思い出したことをそのまま口に出す。
あまりの唐突さに最初は面くらい、戸惑ったものだったが、いつしか自然と慣れてしまっていた。
否、慣らされてしまっていた。




「あたし、忍足のこと好きなんだ」




いつものように唐突に、いつもの口調と台詞で告げられた言葉。
ああ、そういえば慈郎はとてもそう言う所が聡かった。
息をするように自然に計算し、罠に填めるのだ。
その内容を捉えて理解した時、瞬間的に頭の片隅でそう思った。

もう自分は取り返しの付かない、ミスを犯してしまったのだ。



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