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□山脈
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「ジロー…駆け落ち、せぇへん?」
「いーよ」













山脈













都内某所、氷帝学園…ではなく、その最寄り駅から二度路線を乗り継いで来た見知らぬ土地。
そこを目的地とした理由は特になく、出来るだけ遠くに、という忍足のただ一つの注文を叶えた結果だった。
「…人、ほとんどおらんね」
「平日だし、田舎だし、寒ィし」
普段暮らす東京と同じ名を持つ範囲内の土地であるにも関わらず、余りの差に呆けた様子でこぼす忍足に、簡潔な理由だけで答えが返ってくる。
音源を辿ろうと振り向けば傍らをすっと通り過ぎる影。そのシルエットは隣のひょろながい忍足と比べると小さく、まるで正反対のそれで。同じく正反対の中身を示すようにぼんやりと立ち止まったままの忍足の側を通り抜け、マイペースに駅の階段を下りていく。一瞬後に置いて行かれると気付いて、忍足は慌てて固まっていた体を動かした。



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