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□恋愛事情
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憎らしいほど人を好きになるなんて、考えた事もなかった―…

こんなにも一人の人を好きになるなんて。
自分の心のすべてをその人のことだけが占めてしまっている。
出会ってすぐに俺の心全部持ってちゃって。
なのに自分だけ涼しい顔をしている。
そんなのってない。
好きなのに、嫌い。
自分の心に共存する絶対不動の大きな矛盾。
自分でも何がなんだか分からなくって。
胸のどこかが重くて。痛くて。
喉をかきむしるくらいの衝動が自分の中にある。
この気持ちをなんて表したらいいのか分からない。
すぐそこまで出ている言葉。
なのに言えなくて。分からなくて。
自分のことが分からない。
不安と焦燥の狭間に放り込まれたみたいで。
周りが見えなくなって。

だれか
だれかたすけて

   コノ気持チヲナンテイウノカ教エテ下サイ


見慣れた天井。
覚えのある間取り。
机の上には教科書と参考書。
無機質なテレビの周りに雑然と散らばった漫画や洋服が自然な雰囲気を演出している。
そう、どこからどう見ても自分の部屋以外の何物でもなかった。
ただ目の前に別の意味で見慣れた不機嫌そうな仏頂面があること以外は。
「………部長」
「なんだ」
「何であんたが俺の部屋にいるんスか」
このとき俺がどれほど驚いたか、他人には絶対に分からないね。



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