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□僕らの距離
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「あれ…おチビもしかして身長伸びた?」

ことの発端は、朝練中のこの菊丸の言葉。
いつも通り挨拶をして練習に行こうとした越前をじーっと眺めてからぽつりとそう呟いたのだ。
「え…?」
「なんだよ越前!身長伸びたって?水くせーな教えてくれればいいのに!」
「うわっ」
菊丸の言葉にぽかんとしていると、聞き返す暇もなく側にいた桃城に肩を組まれる。
体重をかけるようにされて前につんのめりかけて、迷惑そうにそちらを見上げると、そんなこちらの表情には気付かないのか笑顔で叫び始めた。
「ちょっと聞いてくださいよ先輩ー!越前身長伸びたってー!」
「ちょ、桃先輩!」
まだ確認もしていないのに言い触らすとは何事か。そう抗議しようとしてもすでに遅く、元凶となった菊丸も面白がって騒ぎ始めた。
「大石大変だよー!おチビがおっきくなってるよー!」
「あ、おい海堂聞いてくれよ、コイツ身長伸びたらしいぜ!」
「ちょっと…二人ともウルサイ。成長期なんだから少しくらい伸びたっておかしくないじゃん」
悪ノリして誰彼構わず声をかける二人に呆れたようなため息を吐いてたしなめても、もうすでに手遅れで、ちょうど部室から出てきた残りのレギュラー達が集まってきた。
「おはよう越前。身長伸びたんだって?言われてみれば確かにそんな気もするね」
「そうッスか?対して変わらないように見えるんスけど…」
「越前も成長期だからな。これからが頼もしいよ」
「良かったね。来年くらいには越前もかなり大きくなってるかもしれないなぁ」
「まあとりあえず測定しておくか。データを取っておこう」
あっと言う間に取り囲まれて好き勝手なことを言われて、複雑な顔をする。
褒めているのか?と疑問に思いながらももう自分では収集がつかなそうなので好きにさせて置くと、どこに持っていたのかメジャーを取り出して乾が身長を計る。
「はぁ…」
おとなしく玩具になることにしてじっとしていると、興味津々といったような菊丸が面白がるように越前と乾の周りを回る。
「どうどう?乾?やっぱり伸びてるよな?」
「…155.6。間違いない、4センチは伸びてるな」
「「おおー…っ!!」」
その具体的な数値を聞いて一気にざわつきが大きくなった。



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